第3話 灯火
お坊様がいっていた通り、冬がきた。
少年の家は天井と玄関がない。風はびゅーびゅーと通り抜けてしまう。
もちろん近所の家すべてに天井と玄関が無いわけではない。というよりも天井や玄関のない家は少年の地域では珍しかった。立派な屋根をもった家もたくさんあった。しかし少年はどうしても天井と玄関をこしらえる気にはなれなかったのである。
少年は冬が来た時には2つの暖炉をつかって体をあたためた。意外とこれで乗り切れるものだ。少年はいままで真冬を一週間以上経験したことがなかった。少年の世界では春夏秋冬はほとんど均等に4分の1の確率で来るので、同じ季節が続いて長引くということはほとんどないのである。
少年が暖炉にあたりながらしばらく本をよんでいると、ピンポーン、とインターホンがなった。すぐに振り返ったが入り口には誰もいない。外に出ると入り口のそばには小さな携帯暖炉がおいてあった。いままでのどの暖炉よりも小さい。
暖炉はガラス製だった。結構おしゃれだ。ステンレスと耐熱ガラスでできているらしい。どうやらエタノールを燃料とするようだ。もう5年ほどは新しい暖炉を手に入れていなかったので、うれしかった。少年の家にある暖炉は頑丈だが、突然壊れてしまうこともあるらしい。1週間以上冬が続くこともあるかもしれない。そうおもって少年は新しい暖炉に火をともす。
あたたかい。
この世界では、暖炉は体を温める唯一の手段だ。多いに越したことはない。少年は、そうおもって本の続きにとりかかった。
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