第18話 情報交換

以前の喫茶店に行くと、八時より少し前だった。

初対面の敦くんはタバコを吸わないかも知れない。今のうちにーー。

浩司はタバコに火をつけて、しばらく宙を眺めてはタバコの煙を吐き出す。


この事件、被害者たちの共通点などがまだわからないままだが、本当は単なる自殺なんだろうか??


漠然とそんな事を考えている。

と、その時、カランカランと入り口のドアが開いた。


「おーい!こっちだ!こっち」


俺は精一杯の声を出して彼を呼んだ。

来たのはマモルだった。


「待ったか?」


「ちょうどタバコを1本吸ったところだ。ところで敦くんはタバコは??」


「吸ってるから気にしなくていい!」


「良かった」


そんな会話をしていると、噂の敦くんがきたようだ。


「アツシ、こっちだ」


マモルが呼び掛ける。


「悪い、遅くなったーー」


軽くそう言って、アツシは頭を下げた。


アツシはボーズに近いくらいの短髪で、鼻の上にニキビの様なものが出来ている。

目元が離れていて、顔のバランスがアンバランスだ。

こちらを見てニコヤカに言った。


「遅くなりすいません。マモルのイトコのアツシと言います。始めまして」


そう言って、アツシは手を差し出した。

俺もまた自己紹介をしてから、その手を取った。


「よろしく!」


二人の声がはもる。


「それで、それぞれが集めた情報を出し会う前に、何を頼む?」


浩司が聞く。

二人ともホットコーヒーだと言う。

浩司は3人分のホットコーヒーを頼んだ。


「ふぅ、俺、お手上げだよ!進展なし、共通点もみつかっていないんだ。沢口望の友人だったという子は自殺する動機も思い付かないと話していた」


浩司はそう言って、両手を上げた。

目線をマモルに向けると、声もなくマモルが説明を始めた。


「俺の方は少しだけ進展があったんだ。どうやら、西島佳子は「不死鳥」というものと関わりがあるらしいんだが、その不死鳥が、何なのか?わからずじまいなんだ」


そう言ったすぐ後だ。

隣でコーヒーを飲んでたアツシが吹き出して鼻の上にコーヒーがついている。


「な...なんだって?」


アツシは鼻にコーヒーをつけたまま、そう言った。


「だから、不死鳥だよ。それが何かはわからないけど?」


「それなら俺が聞いたよ!不死鳥って、心理学系の事をしている宗教のようなグループだそうだ。西島佳子と田中宏美は、ある女子高生に不死鳥っていう組織に入らないか、と勧誘をしに行ったらしいーーその子の前で西島佳子は、自分の事を「カラス」と呼んでいたらしい」


「二人には共通点があったって事か?」


「そうなるな。あと一点、田中宏美は自分の事をツバメと名乗っていたらしい」


ーーどういう事なんだろうな。


三人は揃って、タバコに火をつける。

いろいろな想いを巡らせながら、その煙の行き先を見つめた。


ーー不死鳥に、ツバメ、そしてカラス。


まだ不明な事が多い、女子高生達のこの自殺の真相に少しずつ近づけているのだろうか?

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