第17話 ツバメ?

「もしもし、俺だけど?」


受話器の向こうからは、ニシジマケイコの事を調べているマモルの声がした。


「どうした?」


「少しは進展してるか?」


「あぁ、ちょっとはな」


「明日、金曜日だろ?打ち合わせは何時にする?」


「八時頃でどうだ?前の居酒屋でーー」


「あぁ、わかった。遅れるなよ!浩司には俺から伝えておく!」


マモルは言った。

そもそも、敦は、浩司という人物には会った事もないし、電話で話した事もない。

彼の人物像すら、知らないのだ。

明日、ようやく彼と初めて会う事になる。


それまでに少しでも情報を集めないとーー。


街はオレンジ色の夕暮れに染まっていく。

そんな中、男子学生が3人歩いていた。


「ーーすいません。ちょっといいかな?」


「何ですか?」


こちらを真っ直ぐ向き、質問を待った。


「君たち、この子を知ってるか?」


田中宏美の写真を差し出す。


「もしかして、これってーー?」


「知ってるのか?」


少し前のめりになって敦は聞いた。


「これって、ツバメだよな?」


ーーは?ツバメ??


意味は分からないが、学生は仲間に確認すると、笑っている。


「ーーツバメってどういう??」


「そいつ、元々は田中宏美って言うんだけど、ある日を境にして、ツバメって呼ばれるようになったんだーーなんでかは俺らはわからないけど」


「ある日って、どれくらい前かわかる?」


「うーん。一年くらい前だったかなぁ?」


「他に何か知ってる事はある?」


彼らは首を横に降って、知ってる事はもうないと否定した。


「それじゃ、この子たちは知ってるかな?」


沢口望、西島佳子。

二人の顔写真を見せる。


「うーん、わからないです。すいません!」


学生たちは首を振った。


「ありがとう。また何か思い出したら、ここに電話して!」


そう言って、今更ながら名刺を差し出すと、お礼を言ってその場を離れる。


今日分かったことは、宏美=ツバメ。佳子=カラス。

そして、グループの名前が不死鳥。

宗教のような心理学の研究者ーー。


ふぅ。

軽いため息を一つこぼしてから、敦はぼやいていた。


ーーこの自殺、分からない事が多すぎる。

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