第7話

「これ、ジアさんにも話していないんです。実は私、、」


 ジアさんにさえまだ明かせていない秘密を社長に話した。これを言ってしまえば、ジアさんに何と思われるか不安だった。


 もちろん社長に対しても同じ気持ちだったが、社長にはなぜか隠せないと思った。


 もし韓国で活動するなら少なからず影響が出てしまうところもあると思う。分かってはいたけれど怖かった。


 小さい頃の高熱。それによって出来たハンデ。生きていく分には問題ない。けれど、このような職業ではどうなるか分からない。このことを打ち明けてどう言う反応をされるのか分からなかった。


 けれど、社長は思っていなかった返しをした。


「それ、今はある程度治ってるってことなんだよね?今の医療が発達してて本当に良かったよ。けれど今話したその後遺症が少し出ていたってことなんだね。できれば出ないようにして欲しいけど、流石に難しいか、、。これについては何かあったら僕にすぐに言うこと。他の子達にも伝えておこうか?」


 他の子達にも知られる。その言葉に少し恐怖心を感じてしまった。何も悪いことではない。私がしたことではないのだから。けれど、このことに対して向けられる目が必ずしも良い物ばかりではないのは今までの生活で私が一番良く分かっている。何よりも、今この状況でそんなことを明かして、何か優遇されたり同情されたりするのは嫌だった。


「いつかは明かさなければいけないことだと思います。けれど、まだ始まったばかりです。このハンデのせいで優遇されたり同情されたり何か違うフィルターをかけて見られるのは嫌なんです。ハンデがあろうとなかろうとやることは同じです。今はまだ

二人だけの秘密にしてもらえませんか。」


この答えに社長は少し戸惑ったようだったけれど、私の気持ちを察したのか問い詰めはしなかった。


 その後、これから通う高校について話すことになった。

私はまだ今の時点では韓国語が完璧ではないことと、通信制高校であれば他の子達よりも練習ができるし、今の実力を他の子達と同レベルくらいに近づけるために少しでも良い方向に進むことができるのではという事でこのままの高校に通うことになった。



 ある程度話も終わり、礼をして部屋を出ようとした時社長がトントンと肩を叩いてきた。


「ふうか、自信を持って。君の明るさを消さないように、君にはたくさんの魅力があることを決して忘れないでね。」


 そう言ってきた。この社長にはこれからもたくさんのことで助けてもらうことになるのだろうと心の中で精一杯感謝した。




 午後になって、昼食の時間になった。ここは12時台に必ず昼食を取ることになっているので他の練習生も急いで帰ってきていた。


 入り口に行くと、ソヨンが駆け寄ってきた。ソヨンによれば、学校にいるときも私と一緒に練習できることが楽しみで早く来たかったらしい。何ともソヨンらしくてそれを嬉しそうに話すソヨンがとても可愛かった。


 ソヨンと話していると、声をかけられた。声の主はジスオンニだった。昨日一緒に昼食をとったことで仲が深まったようでとても嬉しかった。オンニはまた今日も一緒に昼食を食べようと誘ってくれた。




 そして、昼食を食べ終わった後いよいよレッスンが始まった。最初はボーカルレッスンをするらしい。レッスンをする前に練習室を掃除して先生を出迎える。入ってきた時は優しい印象の先生だけど、結構厳しいことを予想して心構えをしていた。


 いざレッスンが始まるとやはり厳しい先生だった。デビューするためには当たり前のことだろうから気を引き締めて望んだ。

 

 まず課題曲が出された。これを月末の評価までに完璧に仕上げなければいけないらしい。ダンスと合わせて本番では踊りながら歌うらしいので最初からハードだとびっくりした。

 

 隣のソヨンを見ると少し暗い顔をしていた。訳を聞いてみると、ダンスは得意だけど歌はそこまで自信がないらしくうまくできるか不安らしい。


 私は精一杯の韓国語でなんとかソヨンを励ました。ソヨンもそんな私の気持ちが伝わったのが明るい笑顔を取り戻した。


 良い雰囲気になったかと思えば、先生の話を聞いているとまた驚きの試練が降りかかってきた。これから30分時間をあげると言ってきた。その次に続く言葉に思わず口を開けたまま固まってしまった。


「そしてその時間内にその課題曲を暗記しなさい。」

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