第4話
「これから、君たちには1人ずつ歌とダンスを披露してもらう」
先生のその一言が私の心臓に突き刺さった。ただでさえオーディションで披露するのも大変だったのに今からまた披露するのかと思うと心臓が張り裂けそうだった。
そんな私の様子を察したのか隣にいたソヨンが優しく背中をさすってくれた。そのさすってくれる手も少しだけ震えていたことにその時は気づかなかった。
順番に名前が呼ばれて次はソヨンの番になった。私は一言頑張ってと声をかけた。ソヨンはその声に反応するように少し微笑んで前に出ていった。
ソヨンのステージはそれはそれはすごかった。オーディションの時にダンスがとても上手な子だという印象ではあったがここまでだとは思わなかった。
バランスが取れていて緩急もしっかりあって見ている人を圧倒するダンス力だった。何より、表情がパフォーマンスに合っていて思わず見惚れてしまった。歌もしっ
かり芯のある声ですごく感動した。
先生からもいい評価をもらって戻ってきたソヨンはまるでスターのようだった。ソヨン自身は少しミスをしてしまったと悔しがっていたけど。そんな姿を見て私も頑張らないといけないと思った。
いよいよ名前が呼ばれて次は私の番になった。何かあった時のために2曲分練習していて良かったとこの時心から過去の自分に感謝した。
自分自身、歌もダンスも実力不足なのは自覚していたので今できる最大の力を出して、せめてと思い表情管理には気をつけて披露した。
周りの静かさで曲が終わったのだと気づいた。ミスをしてしまった部分もあったのでもしかして何かやらかしてしまったのかと怖くなったが、少し間があってから拍手が起きた。
上手く出来たか不安しかなかったけれど思ったよりは先生からも良い評価をもらえた。けれど実力が足りないのは指摘された。予想していたことだけどやっぱり改まって厳しく指摘されると案外心にくるものもあった。
パフォーマンスが終わって席に戻るとソヨンが満面の笑みで迎えてくれた。
「お疲れ!良かったよ!!」
ソヨンの明るい笑顔を見ると何故か元気が湧いてくる。今の私にとってソヨンは天使のように見えた。
そうして全員のパフォーマンスが終わった。個人個人ではある程度アドバイスをもらったのでランク決めをするらしく先生は部屋を出ていった。
ソヨンと2人で肩を抱き合い、緊張で潰れそうな心をなんとか必死に保った。
数分くらい経った時、先生が戻ってきた。ランクは5つに分けられるらしい。もしかしたらもうダメかもしれないと思いながら結果聞いていた。
すると、私の名前が聞こえてきた。ランクは下から2番目のDだった。まあ、想像していたところだったので静かに受け入れた。けれど、もしずっとこのままのランクだったり1個ランクが下がってしまえばデビューは確実に出来ないだろうと思った。
ただでさえ、異端な存在で期待もされているのにこのままでいる訳にはいかないなと一人心の中で気を引き締めた。
順番に名前が呼ばれる中、ソヨンの名前が呼ばれた。なんと1番上のAクラスだった。あのダンスと歌だものソヨンの結果には納得だった。
呼ばれた本人は驚きのあまり口を開けたまま固まっていた。それでもそんなソヨンが出会ってほんの少しなのにものすごく誇らしかった。そして、友達であり尊敬する存在になった。
先生の評価が終わって昼食となった。昼食の後は事務所案内やこれからのことについて説明されるらしく本格的なレッスンは明日から行われるという話だった。
ひとまず一つの試練を乗り越えてソヨンと2人でホット胸を撫で下ろした。食事は事務所内に食堂があったためそこでとる事になった。一体ここの社長はどれだけのお金を持っているのだろうと思わず想像してしまった。
そしてソヨンと2人でメニューを頼み、同じテーブルに座った。他の女の子達もある程度グループができているらしくみんな固まって食べていた。
そんな中まだ席に着いておらず周りをキョロキョロしている女の子が目に留まった。部屋に入った時に気になった女の子だった。もう1人一緒に食べてもいいかソヨンに一言説明してその女の子のところに行って一緒に食べないかと誘ってみた。すると彼女もどこで食べようか悩んでいたらしく喜んでくれた。
そうして少し自己紹介もした。その女の子はキム・ジスという名前だと紹介してくれた。ソヨンと私より1個年上らしく、私にとっては初めてのお姉さんとも言える存在ができた。3人で楽しく食事をしていると、ある言葉が聞こえてきた。
「あのテーブルに座ってる小さい子なんか好きじゃない。」
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