第3話

「これからよろしくね、ふうかさん」


その言葉に導かれるように2022年4月13日、17歳の誕生日、私は芸能事務所F&Bに入所することになった。



社長と少し話した後、ある女の子に声をかけられた。よくみるとその女の子は隣の席に座っていた良い感じの反応をしてくれた子だった。


「사장님이랑 얘기했어?저 사장님 완전 멋있지 꼭 스타 같아!아,나는 윤서연.반가워.아마 동갑이겠지?」(え、なんて言ってるんだろう。)

「아, 혹시 한국말 몰라?」(ハング、モルラ、?あ、韓国わからない、?)

「아 네!」


返事をするとネットの翻訳機を使ってわかりやすい日本語で話してくれた。


「あなた、にほんじん、?わたしユン・ソヨン!よろしくね、?」

(!)「私弓田風香!よろしくね!」


 そこから翻訳機を使ってカタコトだけど少し自己紹介をした。趣味や、アイドルになったきっかけも話した。


 事務所に入るきっかけを話したらやっぱり少し驚かれた。それでも、少し話しただけでこの女の子と何か起きるであろう予感がしたのは言うまでもない。


 これが、一緒にデビューするメンバーであり私の大好きな親友になるソヨンとの出会いだった。



 その後、母に事務所に受かったという報告の電話をした。母もまさか私が受かるとは思っていなかったらしく、電話越しに号泣する声が聞こえた。その声に、これから少しでも恩返しできたらいいなと目が潤んだ。

 

少し話して、今日はまだ初日なので準備とかもあるらしく、一旦帰ることになった。


 母との会話も弾んでいたところに、私の名前を呼ぶ声が聞こえた。電話を切って声が聞こえる方向に行くと、ジアさんがいた。


「やったね!!これからがんばろうね!」


 そのジアさんの明るい笑顔が、まるで先の見えない暗闇のなかにかすかに光る一筋の光のようだった。ただでさえ言葉の分からない国で想像もしていなかった生活が始まるということにとても大きな不安を感じていたが、この人と一緒なら少しは頑張れるかもしれないと思えた。 


 そして、これから生活する場所に困っていた私は翻訳機を使いながらジアさんに話をした。すると、国外からオーディションを受けた人は私だけだったらしくジアさんも一人だけならともともと私と同居生活をするつもりだったらしい。いつもいつも優しくしてくれるジアさんに感謝しながらこの話を受け入れた。



 数日間母と過ごし、これからの未来に対しての決意と少し心寂しい別れを過ごした後、いよいよジアさんの家に向かった。ジアさんの部屋は一人暮らしにしては少し大きくて広い作りをしていた。何故なのか聞いてみると、意外な答えが返ってきた。


「ああ、私社長の妹なの。だから、少し大きい部屋を貸してもらってるんだよね。」


 確かに、苗字は同じだし顔も整っているなと思ったけれどまさか兄妹だとは驚いた。ジアさんにははにかみながらまだ秘密にしていてねと言われた。こうして少しの秘密を抱えて私の挑戦は幕を開けたのだった。



 ジアさんと共に事務所に着くと、20数人の女の子たちがいた。その中にはあのソヨンももちろんいた。


 ふと周りを見渡すとその中に、少し周りの女の子よりは身長が低くて、けれどとても綺麗な顔立ちの落ち着いた人が目に留まった。何故かその人と仲良くなりたいななんて考えていた。


 そんな考え事をしていると、急に肩を叩かれて聞き覚えのある声がして後ろに振り向いた。


「アンニョン!ふうか!」

「あ!ソヨン!アンニョン!」


 ただでさえ知り合いもいない中でソヨンのような明るい友達がいるのはとてもありがたかった。ソヨンはこれから何かあったらなんでも教えてあげる、私があなたの執事になるとまで言ってくれて感謝しかなかった。


 すると、見知らぬ背の高い男の人が入ってきて説明を始めた。ソヨンによるとどうやら先生のようらしい。

 

 しばらく話を聞いていると、今はまだ知らない 、私にとって先の見えない苦難が始まるある言葉が発された。


「これから、君たちには一人ずつ歌とダンスを披露してもらう」


と。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る