転生してもなおの如く、こうなってしまうんだったら転生する必要があったのかな? いや、もう何も言うまい。【逃げた先でも追ってくるよ…… 】
やあ。僕はヒロシ。
今、ダンジョン最深部のボスの前で仲間たちと作戦を練っている最中だ。
僕は
しかし………
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「ヒロシさん…
アナタの『
そう呟いたのは仲間の一人、僧侶の『リボバ=ライ』だった。
炎龍と前置きがありながら、フレイムドラゴンという名前に違和感を覚えるが、そもそも、この世界はいちいち名前が長い。僕の魔法でも実に30文字に及ぶ技名があったりして、その度に『寿限無』か?と心の中で呟くこと
「ライ、その間は敵の猛攻が来るはずだ。回復は頼んだよ」
僕の言葉に何故か表情を歪ませ、ライは言った。
「それが……今月、魔力上限になっちゃって通魔速度制限が掛かっちゃったのよね……てへぺろ」
……これだ。
何故だかこの世界には月額制魔法使用量が設定されていた。
そりゃあ、こんな深いダンジョンに潜れば、魔力が枯渇するのは必至。
こうなれば……
「ビールさん。すみませんが、僕を護ってくれますか?」
強固な全身鎧に身を包んだ戦士、『カラアゲト=ビール』に助けて貰うしか無い。
が……
「身体が汗で濡れて力が出ない……」
––– テメェの頭に詰まってるのは粒あんかぁ?!
この綺麗好き設定の戦士も、毎度こうなる。出会った当時は、その鎧の下にどんな美少女が潜んでいるのかという楽しみもあったが、一部の長い黒髪が頭皮に張り付くバーコードバトラーおじさんと知った時に、その幻想は儚くも散った。
––– やっぱり、僕がやるしかないか…
そう決意をした時、もう一人の仲間が声を張り上げた。
「みんな!力を合わせて炎龍帝…(以下略)を倒そう!! 俺がこの聖剣エルドレッド•ブル•アルギニンハイゴーでトドメを刺す!」
…… このパーティーで一番の役立たず。
勇者は勇者でも蛮勇者の称号が相応しい青年。その
「……『エナジード=リンク』さんはじっとしてて下さい。
僕の言葉にに、『だが…しかし』とか、そんな返答は要らない。頼むから微動だにしないで頂きたい。
–––– さて、どうしたものか?
「皆さん、ここは僕に任せて下さい。ですが、いつも通り討伐報酬の9割を頂きます」
そして、僕の能力の『魔法リチャージし放題』は、魔力制限を無限に追加出来る能力だったが、その都度リアルマネーを女神に献上しなければならないのだった。しかも高額。
よって、討伐報酬の殆どはつゆと消える事となる。
何故、異世界に来てまで搾取されねばならんのだろう?
どのみち、社会のシステムからは逃れられない諸行無常の響きあり。
「「わかった。頼んだぞヒロシ!」」
こうして、僕は炎龍帝なんちゃらの前に立つと、そのドラゴンは何故か人の言葉で喋り始めた。
『我が名は炎龍帝ロドリア=ベルナンシェ=フレイムドラゴン。この世を灼熱の炎で焼き尽くす者なり……』
––– そんな設定なのに、何故か地下で引き篭もっている事はツッコまない。ツッコんではいけない。
『よくぞここまで辿り着いた。だが、ここが貴様らの墓場になるのだ ククク、憐れで泣けてくるわ』
––– 私のお墓の前で泣かないで下さい。なんて冗談は程々にしておこう。
『さあ、掛かってくるが良い。我が灼熱の炎、ヘルフレイム=グレートフレア•デストロイ•スターバスター…………』
「
なんか講釈が長かったので、その間に僕は魔法をぶち込み、なんちゃらドラゴンを倒しました。
こうして、僕たちは討伐報酬を受け取り、女神という名の支配者に上納金を納めると、手には雀の涙程のお金が残りました。
「なあ、女神さんよ。何故リアルマネーが必要なんだ?」
僕の問いに女神は言いました。
「え?だって、異世界転生させるのにお金が掛かるんだもの。アナタ一人の稼ぎじゃあ暮らせないのよアタシ」
–––– ははは、だれもが金の奴隷なんだな。
資本主義とはよく言ったものだ。
前の世界でも、此処でも……
「ヒロシ!新しい討伐依頼が追加さてているけど、この後どうする?」
「そんなの決まってるじゃないか? 稼がなきゃご飯も食べれないし」
…… こうして今日も僕は誰かの掌の上で踊る。何も考えずに。
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