人生の価値 【結果が全てのようです】
『突然ですが、あなたはもう死んでいます』
「ああ、知っているさ。我ながら良い人生だったと思うよ…… 息子や娘、孫にも看取られた……そう、あれだ。大往生ってやつだな」
『ええ、お疲れ様でした。あなたはとても良い人生を送れたようですね?』
「そうだな、思い残す事が無いと言えば嘘になるが、金にも困らず良い暮らしも出来た。
……ところで、君は誰なんだい? 見たところ娘と同じ年頃みたいだが、まさか閻魔大王と云う訳でも無いだろう?」
『そのまさかです。わたくしはエン……と、言っても代替わりしたてですが、父から受け継いだ判断能力には自信があります』
「ははは、これは驚いた。閻魔様も世代交代がある上に、女性が務めているとは思いもしなかったよ。 ちなみに、私は妻のいる天国に行けるのかな?」
『いいえ、あなたは地獄行きです。奥さんも先に地獄で待っていますよ』
「は?」
『ですから、地獄行きです』
「聞き違いかな? 私は生前、悪事に手を染めた覚えなど無いぞ!? 確かに浮気や嘘をつく事もあったが、それでは人類全てが地獄行きじゃあないか。 それに…妻まで地獄とはどういう事だ!?」
『確かに、そんな些細な事で地獄行きなどと申しません。あなたの重罪の意味、それは…… 息子に自分を超えさせる事が出来なかった事です』
「どういう…事だ?」
『つまり、現世での評価とは、未来への貢献。より優秀な思考を後世に残すというシンプル且つ明瞭な指標なのです。あなたと奥様は、より劣った生物を育ててしまった……これは現世の衰退に他ならない、由々しき悪行です。 そうですね…… あなたは生前は社長でしたね? それに例えれば、部下を駄目にしてしまう人材と、上手に育てる人材が居るとすれば、どちらを採用しますか?……答えは明白でしょう?』
「確かに…息子と娘を甘やかして育ててしまったかも知れない、だが、悪い人間じゃない筈だ!」
『お金が無ければ何も出来ない人間が、今後の発展に役に立つとでも? 害こそあれど貢献の可能性は有りませんね』
「そんな…私は…… 経済に貢献した筈だ」
『その場凌ぎの発展など些末な事です。まあ、地獄もそんなに悪くないですよ。さあ、行ってらっしゃい』
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『はあ…もう
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