CLOSED PANDEMIC編 第17話 このハゲェエェー!!!!
ニコラスと談笑しながら地下道を進んでいく主人公。途中で横穴を発見した。「この横穴から風が吹いているな。外に続いているのか?」と横穴に気を取られる主人公。ニコラスは「ああ。ここからクマやチュパカブラが沸いてでてきやがった。ロクな場所に繋がってないだろうよ。ここは無視して元の出口を目指そう」と苦い顔をした。「ああ、そうだな」と言い主人公たちは地下道を出た。
地下道の出口には数匹の熊が待ち構えていた。ニコラスは一瞬ギョっとした表情をする……が、感染者の臭いを放っているなら、攻撃をしない限りは熊は大人しい。そのまま熊を横切り、地下室を後にする。
場面は転換して、ニコラスの車に乗る一同。運転席にニコラス、助手席に主人公。後部座席には縛られて
主人公とニコラスはボスと面会していた。ボスは上機嫌に2人を見る。「任務達成感謝する。これで、ワシの野望に一歩近づいたわい」とボスが2人に感謝を述べる。「報酬は惜しまない。2人とも好きな額を書くといい」とボスは小切手を2人に渡した。(マジかよ。太っ腹だなボス。海に沈められない程度の額を書いておくか)と欲望丸出しの主人公。しかし、ニコラスは「いえ、ボス。報酬はいりません。その代わり、少しお暇を頂きたいのですが」と無欲な姿勢を見せた。
ボスは首を傾げるも「うーん。まあ、いいだろう。しばらくの休暇を与えよう。ニコラスはそれだけの働きをしてくれた」とアッサリ了承した。
「うーん? なんだろう。このハゲ怪しいな」
琥珀はニコラスの行動を怪しんだ。
「そう? お金に執着しない良いハゲだと思うけど」
夏帆は能天気なことを言っている。
再び、場面が変わって、柄物のスーツ、金のアクセサリーを全身にジャラジャラ付けたド派手な恰好をして両手にキャバ嬢を抱えて道を歩く主人公。ボスの報酬を使って好き放題遊んでいる。
「うわあ……趣味悪いな」
操は主人公の格好を見て呟く。操は柄の悪いタイプは好きではないのだ。この主人公は更に通行人に横柄な態度を取り、連れているキャバ嬢にも罵声を浴びせる。店員に偉そうな態度を取る人でさえ嫌う操。正にこの主人公は操が嫌がるところを凝縮したかのような存在なのだ。操としては、この主人公にアンバーを名乗って欲しくないと思っている。
「ははは。いやあ、愉快愉快。この世の全てを手に入れた気分だぜ!」と完全に調子に乗っている主人公。しかし、その腹部にはナイフが刺さっていた。「え?」腹部から溢れる血を見て戦慄する主人公。隣にいたキャバ嬢がニヤリと笑う。刺された主人公はその場に倒れる。(どうして……俺がこんな目に)
「え? この主人公死んだの? ざまあなんだけど……急展開すぎない?」
いきなりの展開に驚く夏帆。最早、ほとんどのプレイヤーが望んでいたであろう展開だが、その説明がされないうちにはスッキリしない。
またもや場面が切り替わって、先程主人公の隣を歩いていたキャバ嬢が黒い人型のシルエットが映っているモニターに向かって話しかける。「アンバーを始末しました。長官……」『うむ。ご苦労だった。アイツは秘密を知りすぎた。放っておけば我が国の機密を喋りかねない』とボイスチェンジャーで変えられた声が語る。「ん-んー」となにかのうめき声が聞こえる。キャバ嬢の足元に転がっていたのは、下着姿にされて身動きできないように縛られたボスの姿だった。
「うるさいですよ。豚」とキャバ嬢はボスの顔面を蹴った。「あなたを生かしているのは、優しさでも気まぐれでもありません。例のウイルスの情報を誰に、どこまで話したのかを吐かせるために生かしてあるだけですから。まあ、話そうが黙っていようがあなたの行きつく先は同じ。喋らずに苦しんで死ぬか、喋って楽に死ねるかの2択ですがね」とボスに冷たい視線を送る。
「え? この人たちなんなの? 組織のボスまで捕らえるとか強すぎない?」
「長官という役職や我が国という発言からして、この国の政府の重鎮かなにかだろうな。ウイルスは国家の機密扱いだからな。昔のこととはいえ、国はウイルスにまつわることで相当後ろ暗いことをしてきた。それが世間に公表されるのを防ぎたかったんだろう」
またもやストーリーを理解してないし、理解する気の薄い夏帆の疑問を操が解消する。最早お約束の流れである。
「それにしても、ここまで情報が洩れていたなんて……匿名の通報をしてくれた人に感謝ですね」とキャバ嬢が意味深なことを言った。
今度は、とある研究施設が映し出された。そこのベッドに寝かされているのはマクシミリアンとヒルダだ。彼らの前に感染対策の防護服を着た中年男性がやってきた。「この度は……我が国がとんでもないことをして申し訳なかった」と中年男性は2人に頭を下げた。80年前の政府の悪行で、この時代を生きているこの人には一切関係のないことだ。でも、立場的には祖先の尻ぬぐいをしなければならない人なのだ。
「2人はまだ体内にウイルスが残っている。このウイルスの効能が未知数な以上は、2人を自由にさせるわけにはいかない。この施設内と中庭なら自由に使ってくれても構わない。キミたちには不自由はさせないつもりだ。だから、我々の祖先の過ちを赦して欲しい」と2人に謝る男性。マクシミリアンは彼と視線を合わせずに「俺はいい……ヒルダと一緒ならな。80年閉鎖環境にいたんだ。閉じ込められるのは慣れている」と返した。ヒルダも「私も入院生活には慣れているよ。入院生活よりかは不自由しなさそうだし、おじさんが謝ることじゃないよ」とこの状況には不満がないことを示した。「ありがとう……本当にありがとう」と男性は涙を流した。
「うぅ……良かったね2人共」
夏帆は泣いている。先程のバッドエンドの末路を見た後だと、ベストとは言えないけれど、この状態はかなりマシな方である。これで本当に幸せなエンディングが迎えられると思った矢先、またもや場面が切り替わる。とある研究施設にいる白衣を着たニコラス。彼の手には小瓶が握られていた。その小瓶がアップで映し出されて書かれている文字がプレイヤーにも見えるようになった。
【K-UMAウイルス 原種】
ここでセピア色の回想シーンが入る。変異株はハゲには効果がないことが判明するシーン。地下室で単独行動を取っていたニコラスが、こっそりと原種のウイルスを抜き取るシーン。そして、匿名の電話でボスの情報を政府に売ったシーン。
ニコラスは自分のハゲ頭を撫でて、原種のウイルスが入った小瓶を見てニヤリと笑った。
そして、始まるスタッフロール。このゲームはここでエンディングを迎えたのだ。
「え……このハゲ。まさか、自分の髪の毛を生やすために原種のウイルスを持ち帰って、仲間を売ったの?」
ハゲのとんでもない行動に夏帆は唖然としている。黒い画面にスタッフの名前がスクロールされるシーンと、不穏な音楽が流れるゲーム。なんとも後味の悪いエンディングである。
「ウイルスを持ち帰ったハゲ……ロクなことをしそうにないなあ」
琥珀は、世界中にウイルスが蔓延する姿を想像する。なんとも酷い光景だった。
「ホラーゲームにはまともな終わり方をしない作品もあるけど……まあ、これもその内の1つだったか」
スタッフロールを見て操もなんとなくやり切った空気感を出している。けれど、実際にやったことと言えば琥珀の苦手な運転をしたくらいだ。
スタッフロールも終わり、タイトル画面に戻された。これで本当の終わり。
「賀藤君。ありがとう。ずっと気になっていたゲームの真相を知れて助かったよ」
「ううん。気にしないで。本当はホラーゲームは1人でやる派だったけど、楽しかったよ」
「ええ……なんかごめん」
ゲームのエンディングみたいに、後味の悪い気にしないでという言葉を貰った夏帆なのであった。ちなみに、琥珀に悪気は一切ない。1人でやる派発言は100パーセントいらないだろって読者が思っても仕方ない。だって、琥珀だもの。
CLOSED PANDEMIC編 -完-
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます