ショコラと操語り

 操の3つのストーリーを鑑賞し終わったショコラは、再び観測者の方を見据えた。


「お師匠様のストーリーはお楽しみ頂けたでしょうか? 小学生時代のお父様と女子高生時代のお師匠様は出会っていた。両者すら知らないその真実を見られるのは、私の力のお陰とでも言いましょうか」


 ショコラは自身のハートマークの尻尾をぴくぴくと震わせた。この反応はサキュバスが上機嫌になっているサインだ。


「お師匠様とフミカ様。2人の関係性も明らかになりましたね。真鈴様が絡まないエレキオーシャンのお嬢様方の絡みは新鮮でした。真鈴様はいるだけでギャグ空間に変えるほどのパワーの持ち主ですからね。ただ、エレキオーシャン内の読者人気としては、格差が大きすぎるんですよね」


 総合でも人気投票1位の操。次いでエレキオーシャン内では2番人気の真鈴ですら、桁が違いすぎて相手にならない程の人気を誇っている。他の2名に至っては1票すら入っていないのがその格差を物語っている。ショコラは、少し困り顔でその事実に触れた。


「お父様が存在しなければ、もちろん私は誕生していませんでした。そして、そのお父様に技術を叩きこんでくださったお師匠様の存在も私の誕生には不可欠。本当にあの世界は奇妙な縁の上で成り立っているんですね。私としては、このお2人にはぜひとも幸せになって欲しいのです」


 ショコラが大胆にも胸元に手を入れて、そこから1枚の紙きれを出した。そして、その紙に書いてあるものを読み上げる。


「里瀬 操様に関して作者の下垣からコメントが来ていますので読み上げますね」


『師匠の存在は、元々は主人公の琥珀が年齢の割に高い技術を持っていることを裏付けるために作りだしたものでした。

 最初からヒロインとして設計されたキャラではなく、与えられた役割としては主人公を導く存在。主人公が問題に直面した時に解決の糸口をアドバイスする存在。と言った青狸並のお助けキャラを想定していました。

 そのため、最初期の段階では、性別、年齢、本名は決まっておらず、作中でも明かす予定はありませんでした。

 しかし、今後の展開を考えた時に、師匠からの縁で大きな仕事を得るという流れにしたいと思い、師匠の設定を固めることにしました。この仕事が正にビナーの案件ですね。

 当初の予定では、匠さんが師匠という設定でした。一応、この時点で匠の妹という設定の操の存在はありましたが、師匠という設定はありませんでした。

 しかし、主人公の師匠にして会社の社長で案件まで与えるというのは、キャラ的には盛りすぎだし、師匠が弟子に直接仕事を振るのはいくらなんでも忖度が過ぎるという理由でボツに。そのまま、妹の操に師匠設定が受け継がれたのです。

 本当に連載開始ギリギリまでは、師匠が女という設定はなかったのです。更に言えば、当初の予定では、琥珀は操の素性を知る予定すらなかったのです。師匠が女だと知らないので当然、恋愛関係には発展しない……という流れでした。

 しかし、予想外に師匠の人気が出てしまい、読者からの応援コメントにより、元々ヒロイン不在の物語にする予定が、ヒロインキャラが誕生する結果になったことのです。

 なんぞこの流れ(´・ω・`) 推しがいるなら作者側にアピールするとヒロイン昇格できるらしい。なので、推しへの愛は積極的に作者に伝えましょう。』


「はい、長々とありがとうございました。お師匠様が恋愛面で不遇なのは、元々そういう意図で設定されたキャラではなかったからですね。読者のみな様も推しの私への愛をアピールしてもいいんですよ? ふふふ」


 ショコラが指パッチンをする。ショコラの両隣に現れたのは、琥珀とセサミだった。しかし、その2つの物体はぴくりとも動かず、どれだけ時間が経ってもまばたき1つしない。完全なるガワだけのオブジェクトである。


「次の人気投票のエピソードは、お父様とセサミのエピソードですね。ただ、そのエピソードをやる前に、CLOSED PANDEMICの新エピソードが届いています。こちらを先にご覧に入れましょうか」


 ショコラはパンフレットを取り出して、まじまじと眺める。「ふむふむ。なるほど」と意味深なことを言いニヤリと笑った。


「お父様と政井様の2人が一緒にゲームをする。本編では中々に見られないエピソードですが……ちょっと先行情報を解禁しましょうか。チャプター3では、お2人の間に割って入る人物が1名ほどいらっしゃいます。それは、誰なんでしょうね。くすくす」

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