CLOSED PANDEMIC編 チャプター2終了語り

 再び現れたのは不思議な空間に存在するサキュバスにしてメイドのショコラ。口元に手を当ててくすくすと笑っている。


「本当にお父様とそのお姉様はどうしようもありませんね。ふふふ。性を司る能力を得た身としては、お父様にはもう少しがんばって欲しいんですけど……」


 ショコラの手から無数の青い炎が飛び出てくる。ショコラはそれを1つ1つ覗き込んでいく。


「まあ、難しいですよね。私もお父様がお一人でお造りになった兄弟たちよりも、ちゃんと男女の愛を育んで生まれた弟か妹が欲しいのですけどね」


 ショコラが照れ笑いをする。


「私の能力を使えば、お父様の恋愛感情を増幅させて、お師匠様に好意を向けることができますが……盤外の私がそのような手を使っては興醒めでしょう。直接、あちらの世界に干渉しないと決めているので、なんとも歯がゆいものです」


 ショコラは出現させた炎をしまった。そして、くるりと1回転をする。舞うスカートと見え隠れする脚。その動作に人を魅了する何かがあるとわかっている者の動きだ。


「さて、話をゲームの方に戻しましょうか。ゲームもこれからって時にチャプター2が終了してくれましたよね。少女はなぜ逃げ出したのか。主人公たちはなぜ最初からウイルスの変異株を求めていたのか……と言ったストーリーも気になりますし、主人公が銃を手に入れてこれから無双できるんでしょうか。それとも、やっぱりクマの怪物には銃を手にした程度では勝てないのか。その辺も楽しみですね」


 ショコラが自身を観測している者に向けて人差し指を向ける。そして「BANG!」と言って撃つ真似をしつつ首を傾げる。


「ふふふ。ネタバレをしてしまうと、私はあちらの世界を自在に観測できるので既にゲームの全貌を知っているのです。ですが……やっぱり、それでも人がプレイしているのを見ていると楽しいですね。人によっては反応は千差万別です。特にお父様と政井様の実況付きですからね。どのインターネットにも公表されない貴重な実況配信。私のおかげで特別に見れることを忘れないで下さいね?」


 コツコツとショコラが机に向かって移動する。足を止めたショコラは、ランタンを机の上に置いた。


「さて、初めての試みはいかがでしたか? 今後もこの観測所を覗いてくださると、本編では尺やテンポの都合上カットされた物語をご覧になることができます。人気投票の企画での特典ストーリーもありますし、チェックして頂けると私は嬉しいです。継続して観測して頂ける良い子にはご褒美をあげたいですね。もちろん……サキュバス流のですよ」


 蠱惑的な表情をして、ランタンを消すショコラ。真っ暗な画面にはくすくすと笑う彼女の声が聞こえて、その声は徐々に消えていくのであった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る