CLOSED PANDEMIC編 第1話 友人とホラゲやるとギャグ空間になる説
ショコラのCLOSED PANDEMICの配信が終わった後日。このゲームの真相がわからないでもやもやしている1人の少女がいた。少女の名前は、
夏帆はVtuberというか、動画配信を良く見ている方でゲーム実況も見ている。特に実況で見るジャンルはホラーゲームが多い。その理由としては、夏帆はホラーが苦手で自分1人ではプレイできないからである。単純なプレイ動画でも、夜中に1人でトイレに行けなくなるほど怖がる。誰かの実況が入って初めて観れるというタイプだ。
自分ではプレイできない。けれどストーリーが気になる。だから誰かにやって欲しい。そんなわがままを叶えてくれるのが正にゲーム実況というジャンル。しかし、その天敵は存在する。それは企業の配信規約。映してはいけない区間が設定されている以上、配信者はそれに従うことしかできない。もし、違反した場合は、リスナーが火を付けて大騒動に発展する。最悪の場合、企業側からの損害賠償を請求される可能性もありえるのだ。
つまり、夏帆にはCLOSED PANDEMICの真相を知る手立てがない。夏帆のお小遣いでは決して買えないという程のゲームではない。だが、自分がプレイできないゲームを買うほど夏帆はバカではない。むしろ、ホラーゲームを買って手元に置いておくと呪われるかもしれない……と考えるタイプのバカだ。
CLOSED PANDEMICの続きが気になって気になって仕方のない夏帆。そんな夏帆に失礼な男子2人組から助け船が来ることになる。
「なあなあ、琥珀。お前最近ゲームやってる?」
「ん? ああ。最近はCLOSED PANDEMICってゲームをやったな」
琥珀とその友人、
「へー。それ知ってる。ホラーゲームだろ。確かベイカー博士が」
「やめろ三橋。俺はまだゲームをクリアしていない。今は、チャプター1で止まってるんだ」
「奇遇だな。俺もチャプター1までしか知らない。ムカキンさんがやってるのを見ただけだ」
他の動画配信者が不祥事をやらかす度に勝手に株を上げる男と言われているムカキンという配信者。若い世代ならほとんどが知っているほどの知名度だ。ちなみにこの物語はフィクションであり、人物名、団体名は全て架空のものである。
「そうか。確か今日は部活がない日だったよな? 俺の家で一緒にゲームするか?」
「お、いいねえ。続きが気になってたんだ」
夏帆はその言葉を聞いていてもたってもいられなくなった。真相を絶対に知れないと思っていたCLOSED PANDEMICの続きを見れるチャンス。これを逃したら、一生後悔する。そう思った夏帆は席を立ち、琥珀の席に近づいた。
「あの賀藤君?」
「うわ、出た」
同級生の女子に対してあまりにも失礼な発言。言われた方は傷つく言葉にランクインするであろう発言を受けても夏帆は笑顔を維持しようとした。しかし、その表情がかえって不気味さを演出し。琥珀に余計な恐怖心を植え付けるのであった。
「賀藤君。三橋君と一緒に遊ぶ約束してたよね?」
「そうだけど?」
「私も一緒に賀藤君の家に行きたいかな?」
小首を傾げる動作をして可愛さアピールをする夏帆。普通の男子ならば、普段はクールな彼女が見せる甘える仕草にキュンとくる者もいる。しかし、琥珀には「断ったら殺す。首を捻じ曲げて殺す」という脅迫めいたアピールにしか見えなかった。
「おい、政井。俺は琥珀と一緒に遊びたいんだ。部外者は引っ込んでな」
しかし、三橋が夏帆を拒絶した。男子には男同士で遊びたい日もあるのだ。女子がいればなんがなんでもテンションが上がるというものではない。
「あっそ。優姫も呼ぼうと思ったけどなー。私がいないんじゃ、優姫は来ないかな」
三橋が好きな女の子、
「おい、琥珀。お前政井さんに対して失礼だろ。謝れよ」
「え? 俺?」
なぜか責任を全て琥珀に
「まあ、別に俺は断るつもりなかったからいいけど」
「ありがとう。流石、賀藤君」
琥珀はしぶしぶながらも、特に断る理由がなかったので夏帆と一緒に遊ぶことを了承した。
夏帆は友人の優姫を「賀藤君の家で一緒にゲームをすることになったから一緒に行こう」と誘ってはみたが「今日は新作スイーツ発売の日だからいかない」と断られてしまった。三橋がショックを受けるだろうが、優姫にも都合があるので仕方のないことだ。
放課後、賀藤家に現地集合することになっていたので、夏帆は一時帰宅した後に賀藤家に向かった。インターフォンを押すと琥珀が出てきた。琥珀はなにやら浮かない顔をしている。
「ああ、ごめん。政井さん……三橋の野郎が裏切りやがった」
「え?」
「なんでも、浅木さんにデートに誘われたからそっちに行くんだと。新作スイーツが中高生カップル割なんてものをやっていて、男女が学生証を見せると割引になるらしい」
琥珀としても友人の恋路を邪魔する気はないので、執拗に責めるつもりはない。でも、夏帆と2人きりの環境を作り出したことは少し頭に来ている。
「え? どういうこと?」
混乱する夏帆。なぜ、優姫は三橋を誘ったのか。夏帆は自分の発言を思い返してみた。そう言えば、三橋も一緒に遊ぶことを伝え忘れていた。優姫としては、三橋の予定を知らなかったので誘ってしまったのだ。
これは完全なる自分のミスだと夏帆は思った。優姫なら、予定があると知っていれば三橋を誘うことなんてしなかっただろう。そして、三橋の優姫への恋心を甘く見ていた節があった。先に約束した友人をあっさり切るとは予想ができない。
「というわけで、政井さん。男女2人でホラーゲームするのも難だしかえ……」
「お邪魔します」
有無を言わさず家宅侵入する夏帆。帰れと言わせないスタイル。琥珀の方はあまり乗り気ではなかったが、夏帆の威圧する視線になにも言えなかった。
夏帆が賀藤家に訪れた目的はもう1つあった。それは、琥珀の姉である賀藤
友人の家に遊びに行くという合法的な動機で推しの実家にお邪魔する。中々にできる経験ではない。正に夏帆にとっては聖地。この空気感を肌で味わう。夏帆は知らないことだが、ショコラの魂(中の人)が住んでいるのもこの家なのだ。それを知らないのは幸か不幸か誰にもわからない。
琥珀の部屋に入った2人。ゲーム機は既にモニターに繋いであった。配信時はキャプチャボードを使ってパソコンに画面を映してプレイしていた。だが、配信者でもなんでもないと世間では通している琥珀にとって、キャプチャボードを持っているのは不自然だ。だから。専用の機材は隠したのだ。
ゲームを起動する琥珀。タイトル画面からおどろおどろしいBGMが流れて、夏帆の恐怖を煽る。
ロード画面を呼び出す。そこに表示される主人公の名前は――
【アンバー】。このゲームは主人公の名前をいつでも変えられるという特徴があったので、夏帆が家に来る前に変更しておいたのだ。琥珀は夏帆がショコラの配信を見ていることを知っている。身バレを防ぐために先手を打っておいたのだ。放課後、現地集合にしたのもこのためだ。一緒に下校して賀藤家に行く流れだとこの細工ができない。だから、1度夏帆を自宅に帰らせたのだ。
放課後、高校生、男女、密室、ホラーゲーム、何も起きるはずがない状況。だって、これは現代ドラマ。ラブコメではないのだから。
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