抗告

手首を切った。壁を叩いた。壁紙を引っ掻いた。左の手首からはダラダラと血が流れていた。止血する気にはならなかったし、流れ落ちる血液をティッシュか何かで受け止める気にもならなかった。辺り一面を血液で汚すことが私の抗告だった。世界への異議申し立てだった。

シーツとマットレスを汚した赤黒い血液が私の主張であった。

シーツとマットレスの赤黒い汚れこそほとんど自分の心のようであった。

壁を殴った。机を叩いた。綿棒が入っているプラスチックケースを掴んで、机に叩きつけた。痛む手のひらが心地よかった。

安い肯定なんかはいらないと思った。私に必要なのは強さなのだと本当は心の底から知っていたことだった。

何かを傷付けて、人の心を目に入れず、世界への攻撃性をなぞり象ってやっと、私は生きている実感を持つことができたのだ。

しかしながらその強さだって時がくれば粉々に砕け散るものだ。

私は私の無力を自覚して、

私の信念を守れるのは強くなった私だけなのだった。


--

私が生き方を変えたくないのは

私が一度決めた決意を曲げたくないのは

その決意の上に作り上げた作品があるからだ

その決意を曲げるならば私の作品は否定されなくてはならない

公理たる信念が曲げられてしまえばそこから導かれた結論は忽ちその意味を失ってしまうだろう

それも一つの通過点か

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私は全てやり直す必要があったのに

強くなるためには一朝一夕ではならない

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@mi423

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