第12話 共同任務 前編
「うっ…吐きそう」
「だから…あれほど…止めておけと…言ったのに…」
私たち姉妹は二人して本気の二日酔い。
「…任務行きましょ」
「…そうだな」
支度をしようとしたその瞬間、玄関が開いた。
「うわ、酒臭ぇ!?」
「あ~、飲んでるし」
師匠とカレンが入ってきた。
「…今から支度するところ」
「…同じく」
「これは任務にならんな」
「でも今回は結構依頼料多かったから断る訳にもいかないよ?」
「たしかにな」
師匠とカレンの会話を聞いているうちに支度が終わった。
「さて!行きましょうか!」
「姉さん黙って、頭に響く」
なんで梅酒で酔うのに酔いの覚めは良いんだ?
「カレン、俺が運転しよう」
「じゃ、ローズお願い」
「師匠は免許持ってるのか?」
「ん?あぁ今のところ、宇宙船とロケットの操縦以外なら持ってるぞ」
「ってことはパイロットも?」
「あぁ戦闘機や旅客機、ヘリとか」
「…つくづく化け物だな」
「褒め言葉として受け取っておく」
こうして私たちは師匠の運転する車で現場へ移動するのだった。
「そういえば姉さん、部屋にあったアロマ使ったがぐっすりだったぞ」
「え?あれ使ったの?」
「ほう」
「駄目だったか?」
「いや、あれ使ってよく正気を保ってるな~って」
「どういうことだ?」
「あれは対人用の催涙トラップの一つだ、威力は実験結果だと」
「実験結果だと?」
「常人が喰らえば大体後遺症を残すか、死ぬか」
「…なんでそんなものを部屋に置いてあるんだ?」
「保管場所が無いから」
「危険物を机に置いといて危機感無しとはこれいかに」
そんな会話をしていると。
「…全員捕まれる物に捕まれ」
「「「?」」」
どうしたんだ?師匠と聞こうとした瞬間。
師匠がアクセル全開で走りだした。
「ちょっ!ローズ!!急にどうしたの!?」
「後ろを見ろ」
後ろを見ると車から体を乗り出し、銃を構える男達がいた。
「何なんだ!?あいつらは!?」
「あれは大統領を暗殺しに来た奴らみたいだな」
「まさか、どうやって情報を?」
「…こうは思いたくないが、カレン恐らく内通者がいる」
師匠はなぜ情報が漏れたか分からず戸惑うカレンに内通者がいる、と言った。
「とりあえずあいつらを何とかしないと、全員死ぬぞ」
「…策はあるの?ローズ」
「…ごり押しだが、振り切る」
「どうやって?」
「…」
「まさか、ローズあなた考えてないとか言わないでよね?」
「…まぁ、俺はしがみついとけとしか言わん」
「…とりあえず、カレン、ユリアしっかりシートベルトをして、物に捕まりなさい」
「「了解」」
しっかりしがみついたのを師匠は確認するとアクセル全開で街の中をカーチェイスした。
「ちっ、やるな」
「ちょっとローズ!!お尻痛いんだけど!」
「うるせぇな厚みが足りてねぇだけだろ!」
「酷い!!」
「なんでそんな会話がこの状況で出来るわけ!?」
「カレンの言う通りだ!二人とも頭のネジ外れてる!」
現在あちこちを走り回っているため当然車内は宇宙飛行士の訓練のようになっている。
「よし、ここなら人は居ない…スモークグレネードを投げる!ジュリア頼む!」
「了解!」
人通りの少ない道路で師匠は姉さんにスモークグレネードを渡し、姉さんは窓から転がすように投げた。
すると車のスリップ音が聞こえ、続いてガラスが割れる音が聞こえた。
「よし、これで会議場に行ける」
「「…吐きそう」」
「あらあら、二人ともダウンよ?ローズ」
「しかたねぇよ」
なんで二人は平気なのかと思ったがそれどころではないので言わなかった。
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