第5話 最終訓練

「さて、今日は最後の訓練だ」

「最後?まだ私は師匠に膝を着かせることすら出来てないのですが」

「それはもう無理だとわかったからだ」

「なかなか酷いことを平然と言うな師匠」

「だが事実だ、実際の任務も無理だと思ったらすぐに手を引け」

「自分の身を最優先にしろと?」

「あぁそう言うことだ、失敗した任務はもっと腕選りの奴がやってくれる。さ、無駄話は終わりだ最終訓練を始める」


師匠はそう言うとハンドガンとスナイパーライフルを取り出し。

「好きなのを選べ」

「…じゃあハンドガンで」

「よしそれではあの的を狙って撃て」

「…いきなりですね」

そう言いながらも構え、撃つ、しかし弾は的の中心を外れた。

「構えが違う」

師匠はそう言うと懐からハンドガンを取り出し撃った、弾は綺麗に中心へヒット。

「構え方は…」

師匠は私に構え方をじっくり教え込んだ。


「…さぁ構えて撃ってみろ」

教えられた通りに構え…撃つ。

すると的の中心にヒットした。

「流石だ、しかしまだまだ未熟だ、その感覚を体に染み込ませろ」

「はい」

私は撃った、四時間が経過した頃にはもう銃は体にしっかり馴染んだ。

「よし今日はここまで、また明日」

「はい師匠」


私は師匠の雰囲気に少なからず違和感を感じていた。

いつもはジョーク交じりの話をしながら訓練していたのに対して、今日は厳しく訓練された。

師匠に何かあったのだろうか…


翌日

「今日はスナイパーライフルだ」

「師匠、少し質問が」

「なんだ?」

「師匠、昨日から様子が変です。いつもよりすこし厳しい気がします」

「…そうか、俺の悪い癖だ、よく態度にでる」

「何かあったんですか?」

「…明後日から大規模任務で訓練が出来なくてな、それで焦ってしまった」

「どんな任務ですか?」

「テロ組織の壊滅…」

とんでもない任務だ…しかし師匠はCランクと聞いていたのだが何故そんな大規模任務を任されたのだろう?

「Cランクの師匠が何故そんな大規模任務を

?」

「それはな、ジュリアと相棒だからなんだが、まぁ普通に戦力になるからだな」

師匠はそう言いながらもスナイパーライフルに弾を詰め始めた。

「ほら、訓練を続けるぞ」

「はい!」

「さてあれの頭を狙い撃ってもらう」

師匠が指したのは豆粒ほどしか見えない案山子だった。

「はい」

構えスコープを覗き照準を合わせて、狙撃。

しかし弾は左肩に直撃しただけ。

「弾は重力落下する、それを予測して撃て」

「はい」

スコープを覗き落下を計算して…撃つ。

弾は見事胴体に命中。

「む?ほほう二発で胴体に命中か…」

「やはり一発で当てたほうが良いですか?」

「まぁそうなんだが、普通は二発で当てれるものではない。単刀直入に言うお前には才能がある、ナイフといい狙撃といい普通では出来ないことを平然と出来る」

「それはつまり?」

「『殺し』の才能がお前にはある」

私には『殺し』の才能が…実感は無い、姉さんのほうがもっとあるはず。

「『殺し』の…才能」

「…不名誉か?」

「…少し」

「だろうな、だが『殺し』=『悪』って訳ではない」

「?」

「例えば戦争の時数多く撃破、撃墜した人間が『英雄』と称えられる。ならそれ『悪』なのだろうか?」

「…私には、『もっと別の方法があったのではないか?』とも思います」

「そうか、だがそれはお前、『ユリア』自身の『答え』だ。正解なんて無い、何故だって、人にはそれぞれの『答え』を持っている。国のために数多く人を殺すのが『悪』か『正義』かなんて自分の考え方次第で変わる」

「考え方しだい…」

「そうさ、俺もまたテロ組織の壊滅という本来ならテロリストを、人を『殺す』ことになる、だが今回は『殺しではなく捕獲』だ。

この『捕獲』という考えは『ジュリア』が提案した」

姉さんが…

「あいつはお前と同じ『殺し』の才があるのに殺しの手段をなかなか取らない」

「それは何故?」

「あいつ自身の『答え』だ」

「姉さん自身の…答え?」

「そうさ、最初は皆反対だった…だが奴の一言で全員が賛成した」

「その一言とは?」

「『死んで悔いるより、今を生きて人のために働いて貰うの』だそうだ」

師匠は笑いながら話してくれた。

「『働いて貰う』?」

「採掘場や、畑でね」

後ろの入り口から姉さんが現れ話してくれた。

「ローズ、明後日の任務についてブリーフィングがあるの、参加よろしくね」

「何時からだ」

「今日の11:00」

「了解した、それと『訓練』はすべて完了した」

「あら、速いわね」

「それもユリアの才能と、勘の良さだな」

姉さんは私の前に来て。

「そう…ユリア偉いわね」

そう言うと姉さんは私を抱きしめた。

「最終訓練お疲れ様、明日から貴女はSランク職員よ」

「ありがとう姉さん」

そう言うと私も姉さんを抱きしめた。

私は今日をもってSランク職員として働くのだった。

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