第3話 『ユリア』強化計画

次の日私は姉さんに訓練を受けるため、再び本部へ訪れた。

「来たようねユリア」

ジャージ姿の姉さんが入り口に立っていた。

「はい、BOSSそれで訓練とは?」

「『彼』と一度手合わせして勝てたら訓練は終わり。逆に言えば勝てなければ勝つまで訓練は続くってかんじの訓練」

「『彼』?」

誰だろうおそらく凄腕の男に違いない。

「お、ちょうど来たようね」

後ろから黒い服装で来る男がいた。姉さんの言う『彼』なのだろう。

「…君がユリアかい?」

「あぁ、貴方は?」

「…一応お前の上司なんだが…まぁいいか。俺は『ローズ』お前の姉の相棒だ。 よろしく」

「よろしく…」

「さぁそろそろ訓練を始めましょうか」

私はまだ知らなかった。これから地獄とも言える訓練が待っていることを…


actor本部地下 闘技場にて


「ここがactor本部の最下層。『海溝かいこう』よ」

「地下に闘技場?見世物みせものでもしているのか?姉さん」

「これはジュリアの前のBOSSが作成した階層で、猟奇的りょうきてきなBOSSだっため組織を裏切った奴やターゲットを見せしめとして殺してた。その現場がここ。」

「…この現場を姉さんが訓練場にしたと?」

姉さんは命をもてあそぶことを嫌う、なら訓練場にする。という考えなのだろう。

「半分正解で半分不正解ね」

「ジュリアは訓練場として改良したが、実際は秘密で開発している兵器の実験場にしているってのが正解だな」

「兵器?」

「そいつは秘密だ、actorでも知ってる者は極少数でな」

あくまで秘密というわけか。

「無駄話はここまでにしてさっさと訓練をしてしまおう」

「そうねじゃあよろしくね~」

姉さんはそう言うと奥へ行ってしまった。

なんのためのジャージだったのか…

「まず最初の訓練は近接攻撃、俺に膝を着かせれば訓練は終了だ」

「…わかった」

私はローズの懐に入り込み一撃…という算段だったのだが。

「甘い」

腕を捕まれて巴投げ。容赦が無い…

「バレバレな攻撃はよしておけ、殺す相手に殺されては元も子もない」

「ぐぬぬぬ」

たしかにその通りだがしかし女相手に巴投げはどうかと思う。

「まだまだ!」

攻撃するが躱し投げられ続けて…

四時間が経過した。


もう私は歩くことすらままならない。

「さぁどうしたSランク。まだまだこっちは息も上がってないぜ?」

「ゼェ…ばけ…もの…体力…ゼェ」

「…さすがにやりすぎたか、よし今日はここまでにして休め」

「…了解…ローズ」

「…俺のことは師匠とでも呼べ」

「師匠?」

「あぁ、これからビシバシ鍛えてやるからな。さ、十分休めただろう帰れ」

私は帰路についた。

私は『師匠』に膝を着かせるのだろうか?正直敵うビジョンが見えない。

明日から敬語の方が良さそうだな…


次の日

「今日はナイフを使って訓練だ」

「ナイフ?何故に」

「昨日の訓練はちと厳しいところがあったからな。それと近接戦闘でナイフはあるか無いかでだいぶ変わる」

そう言うと師匠はナイフを渡してきた。

普通のナイフより少し長いし重い。

「重いだろ?」

「はい」

「そいつは特殊合金で作られている。そのため重量は普通より重め、しかししっかり振れるとなかなかの切れ味だ」

「まるで金属バット…」

「ではあの案山子かかしを切れれば合格。簡単だろ?」

師匠が指を指した先には畑でよく見かける定番のわら案山子だった。

「ふん」

力強く案山子に振ってみた、しかし案山子は切るどころか動くことすらなかった。それに。

「くっ…ふ…」

腕に衝撃が来て痺れてしまった。

「力を込めすぎだ、最低限の力で後は遠心力に任せて振れ。そのナイフは常識が通用しない」

「わ…わかった」

私は再び案山子にむかって振ってみた。今度は最低限の力で。

すると案山子の胸元が少し裂けていた。

「ほほう、いい感じだ流石ジュリアの妹ってところか」

「まだまだです、まだ切断にまで至ってません」

「…ふ、諦めの悪さも姉譲りか…」

何か言った気がするが気にせず私は案山子を切り続けた。


数時間が経過した。

「ふん!」

ついに私は案山子の首を切断することが出来た。

「…やった」

「おぉなかなかの断面図だ」

師匠から初めて褒めてもらった。少々嬉しい。

「…さて。ジュリア!どうだ?」

師匠は入り口に向かって叫んだ。

「え?姉さん?」

「あぁあいつお前の訓練をこっそり見てやがったのさ」

「…むぅさすがローズ…よく分かったわね」

本当に姉さんが出てきた。

「ちょうどいい姉の実力見せてやれ」

そう言うと師匠は私と同じナイフを姉さんに渡した。

「懐かしいわね…ふん!」

2本目案山子の前に立ってナイフを振った…しかし案山子は切れることはおろか傷つくことすらなかった。

「姉さん?」

「えい♪」

姉さんはお茶目に案山子を叩いた。するとどうだ案山子がズるりと胴体が横真っ二つに…

「これがお前の姉、そして組織のBOSSだ」

「…」

「絶句してやがる」

「はい、ローズ」

姉さんは師匠にナイフを渡した。

「ん?」

「次は貴方」

「…わかったよ」

3本目の案山子に向かっていく師匠、その後ろ姿は逞しく、そして殺気を帯びていた。

「…」

姉さんと違いシュンと音がなり、案山子が縦に真っ二つしかし師匠はナイフを横に振った。

すると案山子はサイコロステーキのようにバランスよく四つに切られて転がった。

「…」

「さすが、ローズ、やっぱりSランク昇格する?」

「しねぇよ、俺はCランクでいい」

私はあまりの出来事になにも言葉が出てこなかった。

「さて今日の訓練はここまで、解散!」

「…師匠…どうしてCランクなんですか?」

「師匠!?」

驚く姉さんを尻目に師匠は訳を話してくれた。

「Cランクつっても特級だがな、まっ面倒事が少なくてすむってのが一番の理由だな」

「ちょっとローズ師匠ってどういうこと!?」

「そのままの意味だジュリア」

「…面倒事が少なくてすむ…」

「あぁそうだたまにでいいんだよ任務は」

「そういうものなんですか?」

「そういうもんだ…さ今日の訓練は終了。 気をつけて帰れよ」

不思議な人だ。

しかしなぜ姉さんはこの人に特別親しいのだろうか?他の人には厳しいと聞いていたが…

そんなことを考えながら私は帰路についた。これからも訓練は続くだろう。












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