第2話 風神と風印

「そんなやつ仲間にしても裏切られるよ!しかも"デス"で仲間をもう見つけてるかもしれないんだよ?號じゃない奴がいいって絶対!」


竜水が手に汗を握りながら万象に言う。


「いや、號だ。號じゃないとできない。あいつじゃないとできないことだってある!!!!」



力強く拳を握りその後竜水の顔を見る。



「そんなに言うから分かったよ。わいはもう1人の仲間見つけに行ってくる。號の方を頼んだよ。武運を祈る!」


「おう、任せろ。」


そして、俺は號の元へいった。

扉を入るとそこは別世界だった。

学校にこんなとこあんのかと思うような場所だ。カラオケボックスがあり、ミラーボールがあり、しまいにはドリンクやツマミまである。


こんなとこに中二のお頭がいるとは思えん。


そうもして周りを見ていると下っ端に見つかった。


「あ?なんでてめぇここにいんだ?頭いかれちまってんのか?お頭にぶっ殺される前に早く出てけ!!」


金髪で前髪が目の辺りまで落ちたチャラい男が話しかけて来たが俺にはそんな暇などない。


「號に会わせてくれ。頼む。」


無愛想な顔を金髪下っ端に見せて頼んだがそれはスルーされた。



「いや、お頭はお前みたいなヘボに顔を出すほど暇じゃないんだよ!!」



金髪ブサ…。

おっと言いすぎた。

金髪下っ端がポケットに手を突っ込んで睨まれた時だった。



「なんだぁー…。客が来たのか?。」




カーテンの向こうからいかにも格闘ゲームに出てきそうな体で太くて低い声それに妙な、なんというかオーラが重い。



諸葉もろはよ下がれ。」


「え、でもよぉ。お頭こいつ、ヘボだぜ?」



「下がれと言っている。分からないのかァ!!??」



そう號が言った途端。


空気が重くなった。


下っぱ達は足が震えて何も出来そうにない。


ゴクン…。俺は息を飲んだ。



(こいつが鬼の號かよ…話よりもいやつ感が半端じゃねぇな…。それになんだこの雰囲気はしかも体が動かない。)



俺は少しビビっていたものの声を上げた。


「あ、あ、あんたが號か。」


「いかにも俺が鬼の號だが、てめぇは同じクラスの万象とか言うやつか、そんなやつが俺になんだ。傘下に入れて欲しいってか?笑えるぜなぁ?ハッハッ」



ビビって声が出せないのは突っ込まれなかった。だが、周りがつられて笑い出す。



俺は勇気を振り絞った。




「い、いや、悪いが違うな。俺はお前を誘ってるんだ。お前の力が必要なんだよ。この意味わかるか?」



(やばい、緊張で少し挑発的になってしまった。殺される殺されるー!!)



「あー分かるさ。僕怖いから強い號様のお力を借りて、1位になりたいとそゆことだろ?お前の度胸は認めてやろう。だが…な…。」



途中赤ちゃん言葉で喋られたのでムカッと来た。


(殺されなかったー。セーフ。切り替えよううん。切り替え切り替え。)



「確かに1位は取りに行くさ。でも、言っちゃ悪いが號。あんたは俺より弱い。だから、そんな無駄足必要ない。ただの置き駒に過ぎないんだよ。」



「あ?なんだ?お前?俺の力知っててそれか?な!!」



先程の空気感が迫ってきた。


威圧が気圧を押して俺にぶつかるような、俺は足で立つのもやっとだ。



「や、やべぇ。お頭が…。おい!!さっさとお頭に謝れ!!さもないと殺されるぞ!!」



金髪下っ端の諸葉が俺に怒鳴りかけてくる。



(誰にでも"平等"に…。強気でいこう。)




「あ?下っぱのくせに生意気だぞ。俺は今號に話してる。雑魚は引っ込んでろよ。」



「あーはいはいそうですかー。ってな訳あるかぁー!」



最初に仕掛けたのは諸葉だった。

俺に目掛けて走ってくる最中に腕から出てきた剣で俺の後ろに来て腕を振った。



(こいつガチで殺す気だ。)




一瞬の隙が大事な状況だが、俺は足が動かない。



(緊張が解けねぇ。動け。動け。今動かないでいつ動く。情けねぇとこ竜水やオヤジにも見せたくねぇよ!)




そう思った時だ。右足が動いた。

俺と剣の距離は10cm程のところで俺は後ろにバク転し剣を避けて諸葉の腹を右手で殴る。



「ぐはぁっ!!」



俺の右手はもろ入ったらしい。



「おいおいおい。諸葉が一方的にやられてる。デスのNo.2だぞ!」



(デスのNo.2だと?ワンパンやぞ?弱すぎじゃないか?)



「んにゃろっ。」



諸葉も飽きらめない。


俺のすねを左手で持ち、右手で顔を殴ろうとしてきた。


「体の使い方は上手いな。」



まぁ俺は案の定避ける訳だが、諸葉はもうヘトヘトで立つのもやっとだ。



(あのパンチが急所に入ってよかった…。)



「お前みたいな雑魚にこんな時間かけたのは初めてだぜ…。はぁ…はぁ…。これで終わりだ…。オラァ!!」






諸葉が俺に飛びかかってきた時だった。






「もういい。諸葉、見飽きた。」



號が止めに入った。


「お前には失望したよ。それでも組織のNo.2か?な?組織はこんなに呆気ないのか?あ?応えろやおい。お前が3年だからって関係ねぇんだよ。俺がお頭な限りお前は俺の下分かるな?」




「…。はい、、、。」




諸葉はお頭に失望されたせいで立ち往生してた。



「おい、號。3日後校庭で決戦な。勝ったら手を組め。負けたら、傘下に入る。これでいいな…。」




俺は殺される覚悟で言った。



「無論。」



この2文字は重くだが少し俺を認めてる感じがした。



次の日…。



俺は"忍寺にんじ"と呼ばれる場所に行った。



「おーい!爺ちゃーん!」



「おぉ。こりゃあ珍客が来よったな。ホッホッ。」



俺の爺ちゃん忍羅一象にんらいっしょうの寺であり、ここ俺たちがいる参の国では1番の寺なんだ。



爺ちゃんは伍代目忍羅として、忍寺を守っている。



「万象なぜ来たんじゃ?」



「いやぁ。その、俺って忍種じゃん?でも、これといった能力ないしぃ…。ココ最近とてつもなくスピードが上がっただけであって。だから、ここに修行しに来た!!」



俺が喋っているのにも関わらず、爺ちゃんは茶を飲み出した。



「まぁ、何を言ってるかわかんないがとりあえずお茶をお飲み。」



俺は畳十畳分ぐらいの大きな部屋へと案内された。

外には庭園があり、橋がかかっている。部屋には…いや、部屋というより、寺の中には大きな仏、ではなく"風神像"がまつられていた。



「なぁ、爺ちゃん。なんで風神様が祀られてんの?」



「昔なぁ、風神様はこの辺一体を気に入っててなぁ、それで忍羅家と深い絆で結ばれたんじゃ。

風神様は亡くなられたが、その意志はまた誰かに宿るとワシは思うちょる。

まぁジジイの妄想ととんだ昔話を話しても意味が無いがのホッホッ。」



「へぇー。」



俺は半分耳を傾けていたがまぁ、爺ちゃんの事だからとずっと思ってた。



「んで、修行だったかの?」



「お!?おう!!爺ちゃんみたいに術使いたいんだよ!。」



「術の前にお前は"自然変換ネイター"を知ってるか?」



「ネイター…?」



「そうか知らないか。

人には誰にもエネルギーが宿している。でも、普段はそれを見せることはないのじゃ、だが、ある事をすることにより自然変換ができるようになる。」



「あ、ある事って?」




「""じゃ。」




"起"。それは種族関係なく誰もがが持っているエネルギーを出す方法。

体の全身のエネルギーを1点に集中させることによってエネルギーが溜まり能力を使えるようになる。

特に"召喚種ショウカンシュ"などが使う。




「起かちょっと爺ちゃん見せてよ。」



「ほぉ…。分かったわい。はァァァアアアア!!」



一象の周りの空気がうねり出した。

そして、エネルギーは末端から一度中心部を流れていき、そこから右手へ移されるのがよく分かる。



「見とれ万象。壱の術!!」



一象が右手の親指をかじり、血を流す。

その血のついた親指で左手の手の甲に"壱"と書き出した。




自然変換ネイター火印カイン!!!!!!」



ギュイイインーボッファー。




そう一象が言うと、左手から火の玉が出てきた。




「これが自然変換の力じゃこれは火印じゃが、始まりの印である"風印フウイン"をしなければいけない。

段階があるのー1つ目が起を出すこと。

2つ目が風印をすること。

3つ目その先へ。

ちなみに火印なら体温を上げる、水印なら体温を下げる、他にも色々方法で印を変えることができるわい。」



ブォウンと言うのと同時に一象は術を解いた。



「ほれ、まずは何事にも挑戦じゃ。やってみぃ。」



(爺ちゃんのようにできっかな…。)



「はァァァアア!!」


「おお!!おまえ…。」



俺の中に隠れてたエネルギーらが血管を通り、俺の右手へ集中して行く。

その力は限りなく広く深い。



(さっき爺ちゃんは親指を咥えて指切ってたな。)



「俺も…。壱の術!!んんにゃアアろオオ。」



俺は親指をくわえた。


「ホッホッ。」


「くそ!指が噛めねぇ…。」


「ホッホッ。それは万象、仕方がないことじゃ。最初はほれ針を使って血を出すのじゃ。」



一象が針を投げてきた。


「ありがとう!爺ちゃん!」



俺は針を左手で持ち親指に刺した。


プチッ…。


小さな針のおかげで痛みはなく軽く血が出てきた。



「これなら!壱の術!!」


左手の甲に下手くそながら壱を書き俺は言う。





「風印!!!!」






「な、なんと!!」



(万象は基本の力を超えている。

風の力が強い…。万象が言っていた、スピードが早くなって力が湧いたとは、無意識的に風印を出していたのか。)




俺のエネルギーが左手に集中した。


そして、そのエネルギーはやがて風をまとい風の玉となった。



「どうだい。爺ちゃん。俺行けそうかな。」



俺の息は切れてながらもその状態を保つのがやっとの事だった。


そして俺はこと切れた。


ブォウン。



「はぁ…。はぁ。」



「万象やそのエネルギーは今初めて使った感覚か?」



「んーどうだろ。でもなんか走った時とか。諸葉とか言うやつと戦った時と似てるような似てないような。」





「やはり無意識か。万象、お前は無意識的に風印を使えておる。

だからお前は火印や水印といった他の印を使わずに、風印だけ使うことをおすすめするぞ。」




「なんで?火や雷とか出してぇよ!」



「それは難しい話じゃ。千象や百象ひゃくしょうのように風印を出すのがやっとなやつは火や水といった印は案外簡単に出すことが出来る。じゃがの、万象の場合風印の力がもう既に使えておる。これはどういうことか分かるか?」




一象は気合いを入れた声を出して聞いた。



「わかんない。」


ほんとにわかんなかったのでわかんないと答えた。





「"風神様が今お前の中に宿ってるって事だ!!"」





俺は何を言っているのかさっきまでよく分からなかった。


でも、その一言で俺は全てを理解した。



「お前の中に風神様がいる。

風神様を宿ってるってことは、風に特化して強くなり、火や水といった印が弱くなるのじゃ。逆に千象や百象のように風の力が弱いやつほどほかの力が強くなる。

だから万象…お前は風印を極めて強くなるのがいいんじゃ。」





「な、なるほど…。ん、んじゃあさ!俺は火の術とかは使えないのか?」




「普通の人は使えるがお前は風神様のお力で風印が圧倒的に強化されとるのじゃ。」




「なっ。」



「だから風印を極めて強くなれ。」




俺はアドバイスをもとに頑張ることにした。



時計の針が夜の7時を回った。



「おう!もう夜か、俺帰るわ!ありがとう爺ちゃん!」



「ホッホッ。またこいなー。」





俺は爺ちゃんに手を振って帰った。




「ホッホッ。まさか、ワシと同じやつがいたとはのぉ…。どう思う婆さん、万象アイツは忍羅家の光となるかのぉ。」




一象は空を見上げて笑った。



空からは流れ星が1つ落ちてきた。



そして一象は寺の中へと帰って行った。




「お!!流れ星だ!!久しぶりに見たなぁ…。」





鬼の號との決戦まであと1日…。

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