ケイヒドク(Twitter300字SS)

伴美砂都

ケイヒドク

 「家」ではシャンプーも禁止だった。「あれらはケイヒドクです、肌を通して身体に入り、体内に残って魂に悪い影響を与える」唯一許されたのはよくわからない茶色の石鹸で、髪はゴワゴワになり、くさい、汚いといじめられた。経皮毒という言葉を知ったのは叔母の家から高校に通うようになってからだ。

 

 彼女に気が付いたのは二年生の初日だ。膨らんだ髪をなでつけながら俯いていた。息を吸うとあのころの私と同じ臭いがした。


「ねええ、なんかくさくない?」


 何も知らないひとたちが呼応して笑った。シュウキョウに反対だった叔母はこの一年いい匂いのトリートメントでもなんでも買ってくれた。ああ、ケイヒドクだ。私の中にも、毒が残り始めている。

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ケイヒドク(Twitter300字SS) 伴美砂都 @misatovan

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