第5話不在の音楽
ここにあるすべてを
轟音だけで破壊してほしい
不在の音楽は力なく無音に支配され
非実在の空想は具象に置き換えられて
意味を失うことを恐れた言葉たちが
スピーカーから唇から街の灯から
絶え間なくオレンジ色で発されつづけて
私の耳は侵食されてゆく
無言の指によって
眠ることを強いられる夜を
多弁な指によって
食べることを強いられる昼を
幾度数えても数が合わない
絶望を奏でる指によって
轟音の鳴り響く夜を
五号のリングの光る指によって
守られつづける拒食の昼を
この手のひらに感じて
虚構だけで形作られた
世界を築きつづけるために
あなたの叫びをナイフに変えて
否という一字を告げる
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