第4話七千年の光

あなたから遠ざかって

空を駆ける鳥たちの鳴き声を

遥か遠い国の音楽のように聴いて

画面から流れてくる音声と

行き交う車や電車の音で満ちたこの部屋で

かつて見た遠い砂漠の写真と

そこに住まう人々のお茶を

鮮明に思い出してもなお届かずに

茶葉に触れることさえ忘れて

あらゆる瞳が見つめてくる街を歩き

その果てにある図書館を夢見て

永遠に辿りつかない重い足を引きずり

日傘は両手で支え持って顔を伏せ

婚礼の儀式をひとりきりで行うように

罪人がいたたまれずに顔を隠すように

道を行くことばかりが頭を離れないまま

詰められそうにない距離にあるものばかりを

追う兎になっていたことに気づく

あなたの光が七億光年先に届くには

まだ六億三千年の時が必要で

七千年をかけて届いた微かな光線が

海の上できらめくのに心は涙する

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