2033年11月4日 - 最後の覚悟
刻一刻と世の終末までの日が迫ってくる。
外に出るとまだ営業している店も多い。
病人が死ぬ前に息を吹き返すかのような最後の活気だ。
ここ1週間で1番、いつもよりも活気付いているように見える。
一部の学校や会社は週休2日で、
月曜は「終末の日」により休業となっているので
今日が「ラストワーク」なのだろう。
自販機で飲み物を買い、誰も居ない公園の一角で、椅子に座ってそれを飲む。
前は日曜の日課だったが、もう仕事が無くなった以上、今日も同じようにするか。
そう思って座っていると、隣に人が座ってきた。
顔には出さぬものの、非常に不機嫌となる。
「一人身の幸せ」を噛み締めていたのに。
更に隣の人は声を掛けてきた。
「このチョコ、差し上げます」と。
聞き覚えのある声だと思えば、前に引き合いに出した人だ。
この人と一緒にいられれば。
食堂のおばちゃんに言われた「最後に一人」を思い出す。
取り敢えず「ありがとうございます」と受け取ると、
「実は」
どうやら本題を切り出されるようだ。
世も残り2日となって、他人に言えない秘密を打ち明けようというのか。
そう思っていると。
「実は、貴方の事が好きでした」
一度もちゃんとした告白というものを受けた事がない身としては、対処法が分からない。
顔かたちも整っているし、話を合わせてくれる。
こんな良い人は他に居ない。
でも、どうすればよいのか。
あと2日で何をしろというのか。
そう考えつつ呆然としていると、
「今更ですが、貴方となら何だって出来ます」
何故か分からないが、先に涙を落としたのは私だった。
これまでの全てが報われたような気がしたのか、それとも理解者が居るように思えたのか。
はたまた独り身が終わる事に何か感じる事があったのか。
その人も結局涙を流しはじめ、2人とも涙を流した後、一緒に家に向かった。
どうやら私を2日に亘って探していたという話を聞くと、
何だか申し訳ない気分になってきた。
それでチョコがだいぶ溶けていた訳だ。
そう納得しつつもその感情の原動力を知りたくなった。
どうやら私が初めて会った時に、運命だと思ったのだとか。
しかしこれまではそれを信じず、互いに何も無く終わりつつあったが、世界の終末が結末を変えた。
そして今、彼女は私を愛している。
それでその人が満たされるのならと思い、私はこの家での同居を容認した。
これは建前で、本当は私だって、彼女の事が好きだったのかもしれない。
布団は一人分しかなく、彼女の提案で一人分を分け合う事となった。
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