2033年11月1日 - 絶望の一日
天気予報によると、冷え込みが一段と厳しくなるのだという。
朝7時。家を出発して、電車に乗る。
そしてスマホを見る。
やはり昨日の話で持ちきりだ。
インターネットでもそればかり。
ふと目に入ったのが、隕石の予想落下地点の分布図だ。
一番確率が高いとされるのが東南アジアらしい。
多くの学者が終末を唱えており、助かっても津波と塵による旱魃で死ぬから結局は死ぬといわれている。
段々と現実味が増していく。
隕石のルーツや主成分などが明らかにされると、
さっきまでは全く知らない物質だったのに、
あたかも知っていたかのような、博学気分になる。
とはいっても、自慢するような相手はいないのだが。
今朝見た新聞でも一面に隕石の話題ばかり。
そういえば、いつも車内で新聞を広げる「ミスター非常識」は今日は乗ってきていない。
別の車両にいるのか、はたまた休んでいるのか。
普段気にも掛けぬ知らない人の事まで考え始める。
結局あまりする事に手が付かず、昼休みになる。
午後1時。SNSでは隕石信仰が急増していて、
これは神罰だとか、新世界の始まりだとか、言いたい放題である。
そのうち隕石を回避するグッズなども売り出すのでは。
そう思っていると知人がこれを薦めてくる。
最後の日になるまでねずみ講かよ。
いや、最後の日なんて無いのかもしれない。
そう信じていられるからこそ、詐欺を働けるのだ。
詐欺を働けるという事はまだ終末は先の事だ。
友人がそう信じるのなら、私もそう信じよう。
そう思うと、何だか気が楽になった。
とはいえ、この世が続いた所で何の希望もないのもまた事実。
午後には通常通り手が回るようになり、
夜7時、帰路にてスマホでニュースを見る。
ニュースによると、かなり昔のこと、
アメリカではオリオン計画というものがあったらしく、
その改良版として、人類の脱出と隕石爆破を同時に執り行うのだという。
国連が既に対応しているとか、そういうものだった。
だからといって、別に希望は感じない。
今の世が続いても、特に何もないのだから。
当たり前の日常。これが続いて何になる。
嫌な事はあれど、楽しい事はない。
いっその事、人類諸共滅んでしまえ。
そう思って一日が終わった。
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