オレンジ・パージ

三宮のえる

オレンジ・パージ

 ゴツ、ゴツという下手なノッカーの音に、黒衣の青年は重い木製の扉を押し開いた。

「悪りぃな。この面に見覚えは」

 ギィという音の何割増しかで歪んで軋んだビア樽腹の中年男が顔を出す。マリトッツォの残党狩りだ。突き出された人相書きを一瞥するや、黒衣は美しい細工人形さながらかぶりを振る。

「存ぜぬ。時にそなたここが聖域と知らぬでもあるまい」

 舌打ちして踵を返す男を見送って閉めた戸にもたれ、奥に腰かけた橙のシャツこそ本物の神父。

「楽しそうじゃん。僕も一緒に逃げようかな」

 クスッと笑って手に手を取る。合言葉は囁きで。

「「生クリーーーム」」

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オレンジ・パージ 三宮のえる @noel_sannomiya

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