1章『消失する鈴原あゆ』第10話
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少女は目覚めなくてはならなかった。
けれども、何かが足りない、何かを忘れている、と手探りにその何かを探した。
けれども、見つからない。
別れ道だった。
このまま何かを無くしたまま目覚めてしまうのが一番楽だった。
何も考えずに流れに身を任せればいい。
だけど。
少女がそれを望むことはなかった、妥協することはなかった。
探さなければいけない。
見つけなければいけない。
忘れてはいけない。
そうしないと、大切な何かを傷つけてしまう。
『探し物?』
いつからか、いつの間にか側に居た男の子の声が空間内に響く。
少女は、うん、と頷いた。
『君にとって大事な物なの?』
少女は、うん、と頷いた。
『なら、きっと探し物はここじゃなくてもう少し向こうにあるよ。けど、見つけるのは困難かもしれないよ?それでもいくの?』
少女は、うん、と頷いた。
『そっか。なら行ってきなよ。君の大切な物は、失いたくない物は、忘れたくないものはきっとそこにある』
男の子はある方角を指差して。
少女は、男の子の指した方角へと一歩踏み出して……途端、思い出したように振り返り
---------貴方は誰ですか?-----------
と、訪ねた。
『君はここのことを覚えてはいられないんだけどなぁ……』
男の子は困ったように苦笑いをして、自分の髪の毛をくしゃりと撫でて、口を開く。
『俺の名前は四宮彩徒だよ。頑張ってね、鈴原あゆさん』
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嫌に成る程、『私』の心とは打って変わって清々しい空を見てため息を吐く。
いつも通っている通学路を『私』、四宮彩音は億劫に歩を進める。
白鷺州灰音絡みの一件から二日が経っていた。
あゆぽんの記憶を消してあゆぽんを苦しめていた呪いとも言える特性から解放してからのこと。
それからのことは、はっきりと言ってしまうならば、拍子抜けもいいところだと言ってもいい。
あゆぽんを抱き締めて、あゆぽんの意識が無くなった直後。
『さて、あたしは帰るわね?……今の彩徒くん、つまりは、『四宮彩音』の絞りかすみたいな貴女にはあんまり興味無いのよねぇ。今日来たのは復活したよー、って報告とぉ、ちょーっとまた彩徒くんの絶望した表情が見たかっただけなのよぉ』
『あたしが二年間くらい封印されてる間にあたしの所有物とか所有地だとかが勝手にあちらこちらの人に奪われちゃってるみたいなねよねぇ。それも全部取り戻さなくちゃいけないし、落としちゃった『四宮彩徒』の大部分を探さなくちゃいけないし……こればかりは、自我を持ってる可能性も高いし今の彩徒くんの状況みたいになってるかろしれないから厄介なのよね』
『またね、彩徒くん。『四宮彩徒』の大部分を取り戻したら最後に君を貰いにくるわ』
マシンガントークばりに。
こちらの反論する暇も、反応する暇も無いくらいに足早に。
言葉を告げるだけ告げると、その場から白鷺州灰音は消えた。
残った『私』と堀さんとで気を失ったままのあゆぽんを救急車を呼んで運んでもらったり。
一応、二日程『私』は家を無断で、しかも学校を勝手に早退して離れていたので、堀さんに付き添ってもらって一緒に両親に謝りに言ってもらったり。
堀さんの尽力もあって、両親の怒りも不安もある程度は解けた。
だとしても、一昨日は中々に家族会議が修羅場だったし、堀さんにもたいへんお世話になってしまったし、堀さんにたいへん迷惑をかけてしまった。
……両親には、とても心配をさせてしまった。
また、ろくにご飯を食べてなかったのもあって、家族会議が終わった後の二日ぶりのお風呂とごはんを食べて、布団に横になったらそのまま眠ってしまって。
流石に気分が悪くて調子が良くなかったのと……それと、現実に直面するのが恐くて、一日学校を休んで。
そしてあの一件から二日後の今日、『私』は学校に登校している。
何も変わってないように見える世界。
けれど、確かに、この世界は『私』にとって理不尽な最後の修正を成したのだ。
歩を進めて、歩を進めるごとに、大好きなあの人に忘れられている事実が近くなっていくことに、『私』の気持ちは落胆して。
できることならば、大好きなあの人に忘れられている事実を突き付けられることのないようにずっと引き込もっていようかな、なんて考えたり。
「あ……」
けれども。
向き合えない事実は早くも『私』の目の前に現れるもので。
視界に入った信号機の真下。
そこには、信号待ちをしているあゆぽんの姿があった。
心臓がドクン、と揺さぶられるような感覚に陥って、現実に直面するのが恐くて。
一歩後ずさってしまいそうになるのをなんとか耐えて。
自分が撒いた結果だから。
乗り越えないといけない。
一歩ようやく踏み出して、信号待ちをしているあゆぽんの姿が視界にくっきりと映し出されて、それを見て、『私』は安堵する。
『色無し』じゃない。
それはつまり、あの特性を失っているということ。
独りぼっちにしてしまうあの恐ろしい特性が失われたことを意味するのだ。
『私』の視界に映るあゆぽんはしっかりと色が着いていて。
あゆぽんの『色無し』特有の灰色だった髪は青みのかかった綺麗な色になっていて。
あゆぽんの白黒テレビに映し出されるような灰色の皮膚は、健康的な肌色になっていて。
あゆぽんは普通の少女になった、ただそれだけなのだ。
なんの変鉄もないどこにでもいる普通の少女に、誰かと過去を共有できて、誰かと思い出を共有できて、誰かと大切な存在同士になれる、そんな少女に成れたのだ。
……そんな普通の少女の日常に『私』みたいな存在はいらないのだ。
「あ……」
途端、あゆぽんが振り返って歩を進めていた『私』と目が合って思わず声が出た。
あゆぽんは、にこり、と微笑んで。
とたとた、とあゆぽんは『私』の方角へと歩いてきて『私』の目の前で止まる。
……期待してはいけない。
心ではそう思っても、もしかしたら、なんて疑念を抱いてしまう。
いつでも、自分に都合がいいことを人は望んでしまうから……。
そうやって勝手に期待して、落胆して、絶望していくのだから。
もしかしたら、あゆぽんは覚えていてくれているかもしれない、なんて思ってしまった『私』は……
「おはよう!!四宮さんってお家こっちなんだね?」
あゆぽんの言葉を聞いて勝手に絶望するのだ。
四宮さん……そう呼ばれて、胸の奥が張り裂けるような痛みに襲われる。
最初からわかっていた……、あゆぽんが『私』のことを覚えていないだなんて……わかっていた筈なのに……なのに……。
「……っ!!……ぅ……」
涙腺が崩壊するように瞳から出る涙は止まることなく一気に溢れ出て。
心構えはある程度してきた筈なのに、そんなの何の役にもたたなくて。
頭の中をあゆぽんと過ごしてきた日々の思い出がフラッシュバックのように駆け巡って。
この世界では、それはどこにも残ってない『私』の妄想同然のものに成り果ててしまったのだと思うと悲しくて。
あゆぽんはこんな悲しみを、苦しさを、辛さを
、生まれて物心が付いた時から体験してきたのだと、今になって改めて理解する。
忘れられていることがこんなに悲しいなんて知らなかった。
忘れられていることがこんなに辛くて苦しいなんて知らなかった。
「……やだ……やだよ……」
泣きじゃくりながら、『私』はその言葉を繰り返す。
もうどうにもならないのだとわかっていても。
どうにもできないのだとわかっていても。
今の結果を否定せずにはいられなかった。
きっと『私』は今のあゆぽんからしたら変な子だと思われているだろうな……。
話し掛けたらいきなり号泣して意味のわからないことを言うクラスメイトは明らかに不気味だし、意味不明だ。
嫌われちゃったかな……。
「ごめんね」
そんなことを思いながら俯く『私』にあゆぽんは一言告げて、『私』を抱き締める。
一瞬何が起きたのかわからなかったし、なんで、なにも知らない筈のあゆぽんがいきなり謝ったのかもわからなくて。
泣いて、疲れきった身体は大好きなあゆぽんのぬくもりに包まれる。
「彩音っちが勝手に色々と進めちゃったおしおき……と思ったんだけど、ちょっとやり過ぎちゃったかな?」
耳元で呟く。
その柔らかな優しい声音は『私』が知っている、『私』だけに向けられる大好きな人の声で。
「あゆぽん……なの?」
「うん」
「『私』を知ってるあゆぽんなの?」
「うん、彩音っちのことが大好きな鈴原あゆだよ」
どうしてあゆぽんが『私』のことを覚えているのかなんて、わからないけど。
理屈なんて、いらなかった。
理由なんて、いらなかった。
真実なんて、いらなかった。
堅苦しい道理なんていらない。
今の『私』にとっては……ただ、事実があればよかった。
「これからもずっと一緒だよ、彩音っち。もっといっぱい楽しいことをして、私は彩音っちと一緒に幸せになりたいから」
あゆぽんは満面の笑みで『私』に言う。
それは、『私』の元から消失したと思っていた『私』だけに向けられる大好きな笑顔で。
もう二度と向けられることはないと思い込んでいた笑顔で。
あゆぽんのその笑顔を見て『私』はまた涙が溢れてきて……悲しくて流す涙じゃなくて、嬉しくて流す涙が止めどなく流れ出てきて、『私』はあゆぽんに再び抱き付いて泣いて。
そんな『私』をあゆぽんは、『私』が泣き止むまで、ずっと頭を撫でてくれていた。
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「……流石に、鈴原さんの記憶を戻すのは私には無理だよ」
放課後。
運動部がせっせと活動している学校の屋上で堀さんは呟く。
あゆぽんの記憶が残っていたこと。
それ自体としては『私』にとってはこの上なく嬉しいことで。
けれども。
その反面、不安もあった。
奇跡とかで言い表せてしまうことも可能だし、実際、あゆぽん自身も眼を覚ましても『私』のことを覚えていた、ということしかわかっていないらしく。
あゆぽん自身もどうして覚えていられたのかわからない、ということだ。
1つの線としては、白鷺州灰音があゆぽんの記憶を消さなかった、ということだけれど、それだけはあり得ないと断言できる。
白鷺州灰音の意地悪さは身を持って過去に嫌という程に『私』は体験している。
彼女は人が喜ぶことをする筈もないし、わざわざ、実行する、と言った以上、それをしないということもない。
だから、白鷺州灰音は除いて。
……そうしてしまうと、あゆぽんの記憶を保ったままにすることは、白鷺州灰音が行った事実を上書きするような行為なのだから……そうなってしまうと、あゆぽんの記憶をまもってくれた誰かは、白鷺州灰音と同列並みの存在、対抗できる存在、ということになってしまう。
だから、あの場に居て、そんなことができそうな人物-----堀迷彩に、貴女がやってくれたのか?と聞いてみたところ、返答はノー、だった。
あゆぽんはなにかしらの用事で先生に呼び出されていて、今は居ない。
あゆぽんの前で余計な心配させるような話をしたくなかったのと、堀さんも今日1日、『私』と何度も目線が合ったのもあって。
あゆぽんが居ない好機、と思って放課後に誘って今に至る。
……堀さんの周りって常に仲良しグループのお友達がいるから、こうやって誘い出す旨を伝える時に、グループで談笑している中に割り込んでいくのって、すっごい心がすり減った……。
え?なにこの子?的な視線はもう勘弁だよ。
「四宮さんは身体の調子は大丈夫なの?」
「……うん。大分回復した」
「鈴原さんの方は?」
「……大丈夫、あゆぽんはもう『色無し』じゃないよ」
屋上の手すりに寄り掛かりながら、堀さんが確認程度に呟いた。
一昨日、あゆぽんを救急車に乗せた後に堀さんと帰る途中で、堀さんに『私』のことをあゆぽんが知っている知識量程度+αのことは話した。
『私』が『色無し』と呼んでいる物が見えること。
それは『私』に危害を加えること……そして、新に訂正しなければならないのは、『色無し』の人間は、白鷺州灰音を除いてあゆぽんのように『特性』に蝕まれている人のことも指すのじゃないかという推測。
あゆぽんが『色無し』だったと言うこと。
あゆぽんが自分以外の全てを『修正』してしまう『特性』に蝕まれていたこと。
『私』があゆぽんの唯一の例外だったこと。
白鷺州灰音はどんな人物か、ということ。
流石に、『私』が元々は四宮彩徒といった性別の違う人間だったことや、『私』と白鷺州灰音の過去の出来事はまだ話していない。
いつかは話さないといけない、とも思いつつも、タイミングが掴めなくて話せず仕舞いだし……どうせなら、あゆぽんと堀さんの2人一度に聞いてほしい……本音を言ってしまえば、話して、気持ち悪がられて拒絶されてしまうのが恐いのだ。
『私』は既に、四宮彩徒に戻りたいとも思ってないし戻ろうとも思ってない。
戻る機会が会ってもきっと自分から断るだろう。
……あゆぽんから離れたくない、あゆぽんの前から『四宮彩音』という自分が消えたくない、というのが一番の理由だと『私』は感じている。
ちなみに、堀さんのことについても少し話してくれたんだけど……。
自分は、いくつかこういう不思議な体験をしている。
自分は、四宮さん達みたいな『特性』を使える、四宮さんを見つけたのもその『特性』の効果の1つ。
あゆぽんの修正を受けなかったのも『特性』の効果の1つ。
と、堀さんは一体どんな立場の人間だとか、根幹の部分は聞けなかったけど、『私』も同じようなことしか話していないから深くは突っ込めなかった。
けど、堀さんは決して敵じゃない、それだけは確かに理解することができた。
「四宮さん。今のところはあんまり気にしなくてもいいんじゃないかな?」
「……そうかな?」
「気にしなくてもいい……というより、気にしても意味はない、ってことだよ。もちろん、油断してもいいってことじゃないけど……私達には現状なにもわからないんだからさ……そんなに気を張っても無駄なことだと思うけどね、私は」
堀さんの言ったことは、大分的を得ていたと思う。
確かにそうなのだ。
現状『私』に何もできないし、白鷺州灰音が『 四宮彩徒』を取り戻した時にまた『私』の元へ来るとか言っていたけれど……実際、『私』に出来ることと言えば仮に『四宮彩徒』が自我を持っていたとしたら、彼に白鷺州灰音に捕まらないでー、と念を送ることしか出来ないのが現状だ。
あと、白鷺州灰音の所有地とか所有物を奪った人達の中に彼女を打倒してくれる人がいるのを願うだけだ。
「ところでさ……」
ふと、堀さんが照れ臭そうに言葉を呟く。
「なんか色々とあってうやむやになってたんだけど……私って今は仕方なくあの子達とつるんでたんだけど、やっぱりいくつか物足りなくてさ……平和なのはいいんだけど味気なくて。……普通に僻みとか妬みとかが蔓延ってる生活は流石に私には合わなくて……女子ってそういうものかもしれないんだけどさ……」
だから、と付け加えて。
「遊園地で2人を見て、2人はなんか他とは違うな、って思ってさ……私も、良ければ2人の仲に入れてほしいんだけど……ダメ、かな?」
いつもの強気な、落ち着き払った態度とは裏腹に不安そうに聞いてくる堀さん。
返答は決まっていた。
「ダメじゃないよ、堀さん」
『私』は堀さんの手を両手で握る。
堀さんの柔らかい手の感触が伝わってくる。
「断る理由なんてないよ、堀さん。『私』もできればもっと仲良くしたい、って思ってたから」
堀さんがいなかったら、こんな結末には決してならなかっただろうし、想像することすら辛くなるような最悪の結末だってあったかもしれないのだ。
……だから、と言う訳じゃないけれど、純粋に、『私』はもっと堀さんと仲良くなれたら、って思ってたし。
どうして仲良くなりたいかなんて、そんな些細なことはどうでもよくて。
きっかけなんてどうでもいい。
お互いが仲良くなりたい、とお互いに思っていればそれだけでいいのだ、と『私』は思う。
「ありがと、嬉しいよ四宮さんっ!!」
握っていた手をぐいっと引っ張られて、そのまま引っ張られた身体は堀さんに抱き締められた。
ぎゅー、とまるでぬいぐるみを抱くように抱き締められた。
「え、えと……堀さん?い、いきなりどうしたの?」
困惑する『私』に堀さんは尚、ぎゅー、と力を入れながら呟く。
「いやさ……今日よく鈴原さんが四宮さんのこと抱き締めてるの見てさ、私も抱き締めてみたくなっちゃって……。うん、思っていたよりも抱き心地が良いよ四宮さん、ていうか気持ちよすぎ……なにこれ、癖になりそう」
もふもふ、ぎゅー、を何回か繰り返されて、『私』はいい加減離れようとして、ぐいー、と手を使って堀さんを引き離そうとして。
「そういえば……」
堀さんはふと、思い出したように呟いて。
「いつの日か、私の上履きに画鋲が入ってたことがあったんだけど……四宮さん何か知らない?」
「……し、シラナイヨ?」
それは遠い過去の記憶。
あゆぽんに抱きつかれた誰かの上履きに画鋲を入れた自分の姿がフラッシュバックして。
引き離そうとした手を戻して、『私』自ら堀さんに抱きついた。
ほんとうにごめんなさい、堀さん。
「あー!!2人ともなんで抱き合ってるの!!放課後の屋上でそんなことしてるのダメなんだよ!!ほら、ほりりんも彩音っちから離れて!!彩音っちはそのまま私に抱きついて!!ほら、はやく!!」
ドアをバーン!!と開け放ってあゆぽんは叫びながら『私』と堀さんを引き離して『私』を抱きつかせようと手を大きく拡げて。
そのあゆぽんの元へ『私』ではなくて堀さんが飛び込んで、あゆぽんが勢いに耐えられずにそのまま倒れてしまって。
そのことを3人で笑い合って。
友達同士のくだらない会話をして。
あゆぽんが嬉そうなのを見て、あゆぽんの無邪気な笑顔を見て、心の底から嬉しくなって。
普通の人なら当たり前のことだけど。
きっとこれがあゆぽんの望んでいたもので。
きっとこれからも、あゆぽんは今まで望んでいた当たり前を叶えることができるのだ。
「そろそろ帰ろっか?彩音っち、ほりりん」
「……うん」
「そうだね鈴原さん。……ん、ちょっと寄り道してかない?おすすめの店があるんだけど」
「ほんと!?いくいく!!彩音っちも行くよね?」
あゆぽんの満面の笑み、彼女の幸せ。
もうそれを壊さない、誰にも壊させない。
「うん、『私』も行くよ、あゆぽん」
彼女の笑顔を、幸せを守りたい。
不安なことは、まだまだたくさんあるけれども。
不思議な雰囲気の少女、堀迷彩と。
世界を修正してしまう『特性』に蝕まれ、それから解放された少女、鈴原あゆと。
3人の絆は、ずっと壊れることなんてない。
『私』は信じてる。
あゆぽんが『私』の手を握って、急かすように引っ張って。
『私』はその手を強く握り返した。
1章ーー『消失する鈴原あゆ』ーー終
色彩濁徒 @shinomiyaayu
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