第15話
パチパチ、パチパチとくべた木の枝が燃える中そんな音が途切れ途切れに聞こえてくる。先生から借りた用具セットの中には火打石や着火剤の類は一切なく、仕方ないのでロイドの力を借りて火を起こすことにした。
ロイドが使う術の利点は実体があって、燃やせるものならば火を纏わせたり発火させたりすることができる点だ。術の特性上、必然的に火に触れる機会が多いわけで一見危なそうだが本人は耐火体質のようでいくら行使しても体への害はほとんどない。
手に持つだけで火を付けられるとはサバイバルにうってつけの仲間。
そんなわけで火付けは手早く済ませてテントを組んでロイドと僕は探索に、デグとルミーゼは食事の準備と言う感じで二手に分かれている。
「大体…この辺は粗方回ったんじゃねえか?これくらいにしといてテント戻ろうぜ。もう腹が減って仕方ねえんだよ」
お腹に手を当てこちらに目線を送るロイド
「君って人はホントに(汗)まあでもそうだね。森は暗くなるのが速いからそろそろもどろうか」
みるみるうちに腹が減り食欲が増していくロイドを見ながら僕自身も足が疲れてきたので引き返すことに。戻る最中も周りを見回して気を緩めないようにしてはいるものの、やはり疲労と食欲には勝てそうにない。
「はぁ、先生が『手つかずの森です』って言ってたからてっきり獣がうじゃうじゃ出てくるのかと思えば全然来ねえじゃねえか」
「まあまあ、出ないってことは良いことでもあるからプラスに捉えようよ」
剣を構えながら歩く姿はまさに剣士と言ったところだがこういう所はまだまだだ。
こんなノリの会話を続け、歩いていると「おい!お前」少し上の方から声。
「ロイド、静かに」愚痴を垂れていたロイドをしずませ僕は声のした方を見る。
「お前、ランクミアスの癖にいきがるなよ。大体なんでお前みたいな下位が俺の班にいるんだよ」
「そ…それは私が決めた事じゃない..し」
「知るかよ、気を遣って今日は来ないとか選択肢他にあっただろ」
「え…でも……」
どうやらあの班はミアス判定を受けた子を仲間外れにして憂さ晴らしの的代わりにしているようだ。多分あの現象は他の班でも起きている。僕とロイドはそっとその場を離れ空き地に戻った。
「あ、お帰り。探索お疲れ様二人とも」
「おかえりです。さ、どうぞ」
デグとルミーゼから労いの言葉を受け、僕ら四人は食事の時間に。
「いやぁうめぇ、ルミーゼ料理できたんだな」
「ロイド君は私の事子どもに見過ぎよ。にしても…ほんとにデグ君はおいしそうに食べるわねえ」
ロイドの食い意地にびっくりしながらもルミーゼはデグの方を時々笑顔で向く。
「ほんとにねえ」
デグの食べてる姿があまりに微笑ましく僕もついついデグを見てしまう。
それからしばらくは火に癒されながら食べ進めた。しばらくして
「だいぶ暗くなったし夜の探索行こうぜ」唐突に冒険意識を持つロイド。
ここで僕らが(ここにいましょうよ。危険です)なんて言っても聞かないだろうからついていくことにした。風で時より木々や草がこすれあいサァァァっという音が響く夜の森。
「ちょっと怖いけど…まあ大丈夫だっっな」若干怖がりながらもビビりの称号を避けるためか足元の小石を蹴るロイド。すると石が飛んで行った方角に白く光る瞳、段々と増えこちらに近づく。
「もしかしてロイドの石が当たったんじゃ……」
退きの体勢を取りながらデグがつぶやく。
「そ..そんなこと。魔法で懲らしめればいいのさ」
ムキになって近くの小枝に火を纏わせいくつも投げるロイド。
しかし益々怒らせてしまい、ご丁寧に親子6匹でこちらに突っ込んできた。
僕らは逃げる必死に逃げ、足が棒になるほど駆ける。しばらく走ると巨木と極細の川に突き当たり、右にも左にも行けなくなった。
「うぉりゃあああ!」
僕は力の限り近くの川の水を手元に引き寄せ凍らせて出来た矢をいくつも飛ばす。
「デグ!ルミーゼ!早くお前らも術を使えよ!…早く!」
火玉を獣に放っていく中二人に叫ぶロイド。狼親子と応戦する中で僕も二人の方を見るがどちらも使う気配がない。
「デグ!君は確か転移系だろ。一匹でも送ること出来ないのか!」
必死の中で僕はデグに聞く
「む…無理だよ。僕は小さいモノしか送れないんだ。人や動物なんて絶対できない」ビクッと震えながら返すデグ。
「おいルミーゼ!お前も突っ立てないで加勢してくれよ」
若干キレ気味に言い放つロイド。しかしルミーゼは一向に動かない。
いや、動けなくなっている。
「あぁもうすばしっこいな。全然当たらない」
この手の狼は自分が襲える尺度を知っている頭の良い奴だと思っていたがそうでもないらしい。
「……もうそろそろ..使えなくなってきた…な」
長い間使い続けたことで段々ロイドも僕も威力が下がり再発動までの時間も長くなってきている。
「助けてぇぇぇ」奥の方から後ろに獣を引き連れ逃げてきている男の姿。
そして声が聞こえてきた。次の瞬間、足を滑らせたのかズザザザっと音を立てこちらに滑り込んでくる。
「お前は……ゴッツ?!」「ゴッツ君!」
デグと僕はいきなりの事で驚きを隠せずにいた。
「リヴィ…(デグを見て)お前もか」
ゴッツはすぐさま僕らの後ろに下がるやいなや
「お…お前ら守ってくれるよな?」ビクビクしながら言う姿
「何を言うんですか!こっちだってさっきから戦って限界なのに。君も魔が使えるなら加勢してくださいよ!」
空気を読むとかそれ以前に、ゴッツの姿勢に呆れながら言い放つ僕。
前方は十の獣達、後ろには班の仲間と呆れた級友一名。
この現状、いったいどうすればいいんだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます