第12話
ワルゾ先生の一言でクラスの雰囲気はまた一段と変わった。それが明るいオレンジや赤なのか、それとも暗い黒や紺なのか断定はできない。しかし様々な色が渦巻くパレットと化していることは間違いない。
先生が活動班の編成を淡々と描いていくのを不満そうに眺めている奴もいれば開き直ったのか特に情の読み取れないブスッとした顔のやつもいる。さっきの時間の争点にもなったユーノスミアスというランクは、今日明日で変わるものではなくもう少し長い目で見なければ変化や進展を感じ取ることはできないし紙に書かれる文字も変わりはしない。
僕はこれまで成績と言う具体的な評価が突きつけられる「学校」という環境だからこそこういう差は生まれ存在するのだと思っていた部分が無いといえばウソになる。しかしあの日、パルおじさんに会って過ごして話を聞いたことでそんな思い節は吹き飛んだ。これは単なる「学校」だから、「この国」だからという訳ではなくもっと広い範囲において影響する確かな事実。
前にお父様が言っていた
「この世界の広さを思い知るのは学校を出てからだぞ」と言う言葉の意味も幼いころはあまりわからなかったけど今なら分かる気がする。
「リヴィ君…リヴィ君……リヴィ君!」思索にハマっていた僕を呼び戻すロイナ。「前の表にチーム編成書かれてるよ。今回は私とは別チームみたいだね」と少し心配そうな目でこちらを見る。何の目かと思い
「その視線は何の視線だい?」
「いや、まあ大丈夫だとは思うけど興奮でハチャメチャしないようにね」注意を促すロイナ。
「おいおい、その面で心配なのはロイドだろ。えっとロイドはどこの班だ…」言った次いでに前へ移動し表をじっくりと見る。「えっと僕はA班か…メンバーはロイド、ルミーゼ、僕、あとデグと…もうひと枠は空きっと」同じ表に書かれた班ごとの席位置に移動し腰を下ろす。
装具をいったん箱にしまったかと思えばこちらを向き
「お、リヴィと一緒か。よろしくな。」とロイドが一言。
「あ、リヴィ君一緒なんですね。仲良くしましょう」それに続けて話すルミーゼ。
二人の挨拶を受けながらデグの顔を見ると少し照れが出ている様子だったので
「デグどうした?さっきからよ」と軽く話しかける。
「はっはい…デグです。よろしくお願いします」ソワソワしながらデグは言う。
視線が僕やロイドに向き、中々ルミーゼと話そうとしない仕草から僕はデグの心境を静かに察した。
少しすると各班の机に実習先である「ルイゼナの森」の地図が配られ、先生が話す。
「えー。今各班に配ったのが今回の舞台であるルイゼナの森の大まかな地図だ。繰り返しになるが本実習は野営や探索における経験修得のためのモノである。」少しの間話が止まる。
その間に周りの班を見てみるとどこもかしこも険悪な空気が否めず、班の決め事の中にまでランクの話題を持ち出し仲間割れどころか乖離している班もいる。デグもいつもなら仲のいいゴッツと楽しそうにしているから班別々になって残念がりそうなのに今のデグはそんな様子は見て取れない。むしろ何か嫌なことがあってそのせいで口数も減っているようのではと思う。再び先生が話す
「さっき渡した装具も一応の魔工具ではあるがそれだけではもしもの護身用としては危ない為これを持っておくように」言った瞬間、また転移術で今度は短剣が現れた。
「それは護身用の剣。しかも各々の魔法体質に順応してくれる優れものの逸品。物自体の設計や思想は古いが今でも重宝されてる魔工具だ。もしもの時はさっきのグローブとこれを使うように。」
つまり意訳すると「対獣や物資採集の際にどんどん使えよ諸君」ってことだろう。
その後も同じ調子で活動内容や交流を行ってその日は終わった。僕自身果たして当日うまくいくのか定かではないが、そんなことよりも僕は森には行ったことがないためそれだけで気持ちは好奇心が勝っている。
しかし、デグのあの表情の裏には何があったのだろう。
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