第9話
「国土一斉魔法種能力試験」それはこの国が実施している社会調査の一環として定期的に行われるテストの事。領土内にある初等学校を対象としており、時期は入学時と最終学年の末期の二回。結果は設定された試験科目を終えた者から順次既定の用紙に知らされる。もちろんそこには科目ごとの結果だけでなく前回からの伸び幅や魔工適性等も一緒に記載されている。
ロイドからの宣戦を布告され、なんとか勝利を収めてから二週間。その間も僕は父様に立ち合いを申し込み、魔工の技能に関する本を読み、ロイナと一緒に練習できる時には二人でやったり、一人の時は実技のイメージトレーニングや筆記試験をこなしたりするなど当日の為に出来る限りの備えはしてきたつもりではある。
けどこれは僕だけじゃなく、初等科学校の門をくぐり最初にテストを受けてから約10年の月日を経た。その真価が試される時といっても過言では無い。試験の準備が整った校庭を教室脇の窓から眺め、僕は心の中で熱い語りを続けていた。
「おーいリヴィ君、リヴィ君、もしもぉし」と自分の世界に入りっぱなしの僕をみたロイナが少し後ろから声をかけてきた。
しかし声の先にいる当の本人は全く無反応で、夢中という名のバリアが張られているかの如くピクッとも動かない。
「はぁ」と短い溜息をついた後、ロイナは僕の両肩を持ち前後に揺らす。
一瞬窓の外に顔が出たことに気づき僕は我に返えった。
「びっくりした、居るなら言ってよ」と若干肝を冷やしながら僕は振り向き一声。
「もう試験はじまるから教室戻った方がいいよ」と一言言って席に戻るロイナ。
それを追って僕も自分の席に急いで戻った。
始業の鐘が鳴り、それと同時に拡散の魔法を込めた浮遊する輪を通し
「これより国土一斉魔法種能力試験を行います。皆さんそれぞれ研鑽の成果を存分に発揮してください」との訓示を先生が述べた。
いつもより幾重にも思いが重なり、一言の重みさえも響く。数秒の間、教室は静まり返りまた段々と活気を取り戻す。意識を新たにしてか「がんばろうぜ」や「どうなってるか楽しみだね」といった期待と鼓舞の言葉が室内のいたるところから混ざり合って聞こえそのまま僕らは校庭に向かう。
外に出るとそれぞれ魔法の種類や効果ごとに別れ、個々の専用に用意されたレーンやコートへ向かう。地形操作、攻撃系、転移もしくは浮遊系、供給や回復系、作業系、工学もしくは光学系などその種類は様々でその術形態に合わせた計測を行う。
魔工史や魔工使用発動倫理などをメインにした筆記については事前に先週行われている。ランクの決定や適性に大きく関与するのは今日行われる実技試験、それもあって皆なおさら気合いが入っている。
「じゃあ、またあとで」と言ってロイナとは別れ、すぐさまロイドがやってきて
「負けねぇからな」と言い残し自分の試験場に向かった。
二人を見て「僕だってやってやる」と拳を突き上げ大声で意気込んだ。
すぐに周りからの視線に気づき恥ずかしさがこみ上げ、僕は腰低くコートへ歩き出す。コート前の待機所につくとどこか暗い雰囲気のルミーゼがいた。
様子が気になり「ルミーゼ?どうしたの」と僕は彼女に声をかける。
一拍おいてこちらに振り向き
「リヴィ君….いやぁ今日はがんばんないとね。どれだけ成長できているか楽しみだよ」と彼女は答えた。その笑顔はどことなく不安、何かへの怖さがあるようだった。
程なく開始の合図が流れ、試験が始まった。
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