第8話
学校と言う場所では一限一限ごとにその区切りを知らせる鐘の音が鳴り響く。この鐘の音自体は毎日同じ音色を鳴らし続けているだけだ。しかし試験の前や昼食の前その時々に応じてこの音色に対する心境や反応は様々にある。
二限の鐘が鳴り先生が教室から去っていく。すると座っていた多くの者は腰を上げ、クラスメイトや他の教室にいる友人に声をかけ食堂に降りる。僕も机を整理し出していた教本をカバンに入れて回りとは多少遅れ気味に腰を上げる。
マイペースで品をつまみ一人で食べるのも一興だが、それはそれでまた寂しい。
「ロイナ、また一緒に行こう」と僕は教室から去りかけていたロイナを呼び止めながら少し速足で彼女の元へ近づく。
「はーい、早く行きましょう」と若干素っ気ないような返事をするロイナ。
一階に降り食堂に向かう途中、廊下の窓から校庭を見る。かなりの面積を囲む大きい仕切りと大型中型小型それぞれの的、その仕切りの四つ角には防護の魔法が込められた六角形の装置が設置されている。
「もう準備しているのか、いやぁ遂に来るんだね!ワクワクするよ」と準備風景を眺めていたロイドが話す。それに呼応して
「そうだね。ロイド君のかっこいいとこ期待してる」と言って持ち上げるロイナ。
「おう、ま、任せとけ。戦闘適正絶対高ランクとってやる」と照れを見せながらも意気込みを語った後、ロイドは校庭に用意された仮設の訓練場に向かった。
その様子を見て
「相変わらず熱心だなぁ、あの意気を勉強で使えたらいいのだけど」と毎度のことながら教室とのギャップにびっくりしながらぼやいた。
その後、食堂で腹ごしらえとしばしロイナとおしゃべり。最初は普通に勉強の話や試験の話だった。けれど僕は昨日からあの旅人さんとの一件を話したかった。それを少しばかり抑えきれず、気づいたら一連の出来事についてと何故この町に来たのかなぜあそこにいたのかなどおじさんについての僕なりの軽い裏考察までも述べる時間となってしまっていた。話に熱が次第にこもっていき喉も乾く、自然と手が近くにあったボトルに伸び、ごくごくと喉を潤す。
「はぁ、ごめんねロイナ。いつもの癖が出ちゃって」
「まあこの癖なかったらリヴィ君らしくないしね。でも立派よ、人助けしたんだから」と温かい目で僕を見ながら返すロイナ。
彼女の表情を見ながら(まるで僕の母様みたいだな)と僕の心が一言呟く。
食器を片付け、テーブルを拭き僕とロイナも校庭へ向かった。試験が近いこともあり今日の午後授業は少し遅く始まる。
外へ出て訓練場へ向かうと「バシューン」という弾丸系魔法の音、そして直後に的に当たる音が耳に入る。攻撃手が立つレーンではロイドと他数名の子が練習をしていた。その後ロイドは何発か発動して撃つのをやめた。
「はぁ、命中精度はあんまりだな」と不満そうにつぶやくロイド。
「おーい、ロイドー!」とレーンから少し離れていた僕は彼に呼びかける。
「リヴィ、今度の試験で俺と勝負しろ。最終の評価が高い方が勝ちでいいぜ」
安全装備を外し外に出てくるやいなや、ロイドは僕に宣戦布告をしてきた。
「どうする?挑戦申し込まれちゃったね」と首を若干傾けこちらを見るロイナ。
そんな彼女とロイドの自信満々な顔を見て間髪いれず
「負けないよ、ロイド!」とライバル心を燃やす今の心意気を僕は言い放った。
「二人とも楽しみにしてるね」と笑顔で返すロイナ。
ロイドは初等学校を出た後、工業都市グロッツにあるパナスギア工学舎に進み戦闘技術と戦闘魔工機学を学ぶつもりらしい。だからこれを逃せば次はだいぶ先になりそうでもある。それもあってぼくは挑戦を受けた。
結局そのあと僕とロイナは午後の授業に。三時限ほどこなした後に再び訓練場で練習を始めた。的当て勝負だの発動時間短い方が勝ち勝負だのいろいろロイドから挑まれ、体力は使ったもののギリギリ勝ち越すことができた。
さぁ運命の試験まで残り2週間だ。
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