第4話
帰路を進みながら、僕は時々空へ視線を向ける。雲や空色というものはどちらも不思議なモノ、一日として全く同じ色、雲量、形はなく時間が進むにつれてその様は無限に変化していく。無論、この鮮やかな空が一端の終わりを告げた後に現れてくる夜空も今見ている昼空とはまた違った良さがある。
夕陽は町を染めつつ所々に影があり、反対に夜空は街に灯りが付きそれはそれで風情ある景色が眼下に出来ていく。そんな風に少しばかり心の語りを続け足を進める。
しばらく歩いていると軒下に金床とかまどが隣り合ったマークが描かれた看板が目に入ってきた。そのお店はこの町「ルイルジェント」近くで採れる鉱石資源「エルテナイト」を使った工芸品や雑貨の制作と販売、そしてエルテナイト製の食器を使っての食事処。この二つを組み合わせ、同時に僕の家であるヴィレヴィントン家が運営するお店「ヴィヴィのかまど」だ。
それぞれの店主はというと、工芸品制作販売を主とする鍛冶屋は僕の父様であるレイノ、食事処は母様のローニャが営んでいる。最もこのお店はあくまでも副業的な面が大きく、普段は両親とも店にいないことがしばしある。
僕はスタスタと足を進めて看板の前で一度止まった。時間的にはまだ余裕もあるし、友達の家にいっても難なく帰ってこられるとは思う。ただロイドの一件で少ししか口にできなかったからか、いつもより腹も減っている現状。結局、お店の扉を開けて中に入りテーブル席に腰を下ろした。カバンを横たわらせ、お冷で喉を少々潤してようやく一息つくことができた。
「はぁ、今日も色々あった。ロイドの一件は予想外だったけど先生から色んなこと聞けたから満足」とため息交じりに今日の総括を口に、それと並行してカバンに入れていたノートにそれを書き留めた。
筆記具をカバンに戻しまた水を一口飲む。夏休み前よりも一層と夜空の足音が素早く近づく、それに合わせて空模様も淡々と変化を続ける。そんな景色を窓から眺めていると母様が厨房の方から出てきた。
後片付けの為か僕の隣の席に座りせっせとトレイに食器を乗せていく。
一旦それを裏に戻しまたこちらに戻ってきて
「お帰りリヴィ」と僕に向かって一言声をかける。
「ただいまです母様」と僕は返す。
程なくまた母様が
「もう少ししたらお客さんが増えるから裏手伝ってくれない?」と口にした。
特に課題も出てないこと、父様の帰りが今日は遅いこともあって僕はすぐ
「わかりました」と言って裏に回りウェイターの格好に着替えだした。
その後程なくしてお客さんが段々と増え始め、忙しくも盛況な空間になっていく。
結局、そのあと片付けと店じまいの準備をして僕は一足早くお店を出た。空は暗く家々には明かりがつきだし少し温かみを感じる、そんな頃。
僕はこの町とこの町の人がとても好きで、もちろん首都で働く憧れもあるけど魔工師としてこの町の役にも立てるようになりたい。そんなことを考えながら帰路につこうとした、それと時を同じくして南の方から爆発のような音。
僕はすぐさま音のした方を見て、煙がたっていることを確認した。
僕はその煙の元へ急いで駆ける。息を切らしながらも段々と煙の臭いが嗅覚を刺激
するようになっていく。
辿り着いた場所は街に入ってすぐのところにある広場、目の前には薄紫のローブのようなモノをまとった戦闘の構えを取る男女数名と所々擦り傷のある男の姿があった。
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