第116話 愛(ゆかり)②

 ゆかりが手の甲で愛の体内の体温を感じながら丈太郎を見ていると、目が合った。

 丈太郎が左手を奥に入れる。

 ゆかりも肘までを愛の体内に手を入れてインナーコルセットの切れ端を受け取り、手の平で包み込むようにしてそれを取り出した。


 今までゆかりの手首で栓をされていた愛の膣口から溜まっていた血が流れ出す。

 ゆかりはそれが勿体無いように感じたので、切れ端を医療廃棄物入れに入れるとすぐにまた手で愛の膣口を塞いだ。



「これで最後だ。」


 愛の体内で丈太郎がインナーコルセットの切れ端を渡す。

 それを受け取ったゆかりは愛の膣口から手を抜くと医療廃棄物入れに入れて体を起こした。


「おい、すごいことになってるな。」


 胸から下がべったりと血で染まったスプラッタ映画のヒロインの様なゆかりを見て、丈太郎が驚いた。


「胸に付いた血が下に垂れるのです。」


 ゆかりが自分の乳房を持ち上げながら答える。

 綾がやっていた時には何も問題なかったので、胸の大きさのせいだと気付いて丈太郎は納得した。


「気持ち悪かったら一度シャワーを浴びて来るか?」


「いいえ、また汚れるかもしれませんから作業台に登る前に洗い流したいと思うのですが、いかがでしょうか?」


「君がいいならそうしよう。インナーコルセットを入れたらシャワーも兼ねて休憩だ。」


 丈太郎が愛の上半身を起こす。


「体内の血が出て来なくなるまで支えていてくれ。」


 ゆかりは愛の右側に回って彼女を支える。

 左手と体の側面には血が付いていないので、こちら側なら愛の体を汚すことはない。


「先生。普通の血液ならもう固まっていると思うのですが、何か特別のものが含まれているのですか?」


 ゆかりは右手で胸にに付いた血をなぞりながらインナーコルセットとヒップリフターを取ってきた丈太郎に質問する。


「彼女たちには大きな血管が無いから血小板が少なくて良いんだ。血圧も無いしな。みんなナノマシンが代行しているから血はほとんど固まらない。」


「ミュージアムでは卒業生に怪我をさせた場合、すぐに処置室に運ぶことになっていますが、どうやって治すのですか?」


「切り傷ならここで傷口を合わせていれば1〜2日で癒着する。場所にもよるが道具が使えないから3交代で手で押さえることになるかもしれん。骨折の場合は専用の器具から作ることになるだろうな。擦り傷は表皮部分の代謝が遅いから月単位の時間がかかるだろう。」


「着替えの時は気をつけないといけませんね。」


「最悪の場合は廃棄になるからそうしてくれ。」



 愛の腹腔内に溜まっていた血液の流れが止まったので、もう一度寝かせてインナーコルセットを入れる。

 最後に丈太郎が引っ張るインナーコルセットの端を押さえた時、両手を愛の膣口の切開部分に入れたゆかりは体勢を低くして隙間から愛のお腹の中を覗いたが、脂肪層の奥には白いインナーコルセット以外は赤黒いものしか見えなかった。



「さて、休憩の前に足だけでも洗ってもらおうか。ペタペタ足跡を付けられては後片付けが面倒だ。」


「先生が抱いて運んでくださるという方法もありますが?」


「お望みなら運ばせてもらうが、扉を開けてもらうことになるから手だけは洗ってくれ。」


 ゆかりは水道がある丈太郎の側に行って手を洗い、丈太郎の方を見てから改めて自分の足を洗いだした。


「冗談です。ぬるぬるした私を抱くのは先生も気持ち悪いでしょうから残念ですがやめておきます。」

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