第101話 秋(夏)②

 丈太郎がシャワーを浴びていると、すぐに夏が入ってきた。

 裸になることに躊躇いがないというのは本当らしい。

 カップル用のシャワールームなので、長身の丈太郎からは夏の上半身しか見えないが、水着の跡が眩しい引き締まった健康的な体だ。


「水泳をやっているのかい?」


「あ、水着の跡ですか?肩幅が広くならない程度にですけど高校の部活でやってます。先生に隠れて裸で泳いだこともあるんですよ。」


「君は裸族なのか?」


「違いますよー。裸族はかわいいお洋服が着れないじゃないですか。私が裸なのはお風呂と寝る時だけです。」


 ちょっと感性がズレているがギリギリ個性の範囲だろう。


「先生は凄い体ですね。たるんでお腹の出たおじさんだったらちょっと嫌だなぁと思ってたので良かったです。」


「おじさんには違いないがな。」


「アラサーはおじさんだって言う子もいますけど、普通の子は見た目が良ければ35ぐらいまでなら大丈夫ですよ。」


「じゃあ40の俺はおじさんだな。」


「ウソぉー!母さまと同い年なんですか?20代後半だと思ってました。」


「中身はおじさんだからお手柔らかに頼むよ。」



 夏が髪を洗い出したので視線が下に向いたのだろう。


「先生。男の人でも毛が生えない人っているんですか?」


「ああ、これか?最近助手の女の子が入ったんで見苦しくないように剃ったんだ。」


「おじさんにはそういうデリカシーが大切ですよ。」


 女子高生に褒められた。


「でもその人と比べられちゃうなぁ。お姉ちゃんぐらい胸が大きくなればいいんですけど・・・。」


「彼女も君と同じぐらいだから心配ない。それに君には未来があるじゃないか。」


「悪い人ですね。本人に聞かれないようにしなきゃダメですよ。」


「問題ない。俺は見るなら小さいほうがいいって公言しているからな。」


「そんな人もいるんですね。男の人はみんな胸の大きい子がいいんだと思ってました。」


 夏が本格的に髪を洗い出したので、洗い終わった丈太郎は更衣室に移動して夏の体を眺める。

 胸も尻も物足りない発育途上の体はミュージアムの卒業生でも見掛けるが、水着の跡が残る女子高生の裸を見るのは初めてなので新鮮なものがある。

 そもそも自分が初めて生きている女子高生の裸を目にしていることに気付いた丈太郎は、インモラルな興奮を覚えて陰茎を固くしてしまった。



「先生。ロリコンはダメですよ。」


 丈太郎の陰茎を見咎めた夏がタオルで体を拭きながら言う。


「これか?俺は美しいものはみんな好きだ。同じ年頃の女の子の裸はミュージアムのメンテナンスや処置でさんざん見てきたが、生きてる女子高生の裸を見るのは初めてだと気付いたらこうなった。あ、髪は濡れたままにしておいてくれよ。」


「生きてる方がいいでしょう?」


 夏が小さな胸を張る。


「そうだな。そこをなんとかするのが俺の仕事だ。」


「お姉ちゃんも綺麗にしてくださいね。」


「当然だ。」



「処置室までは窓から丸見えだからこれを羽織るといい。」


 丈太郎は白衣を差し出したが、夏は


「見てるのはおじいちゃんとおばあちゃんばかりですから大丈夫です。それにあんまり見えてない筈です。」


 と言って裸で追いてきた。


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