第88話 女子トーク⑤

 陽子が続ける。


「あ、先生の反応だけど、大丈夫だと思うよ。ちょっといじりすぎたかもしれないけど、しっかり自制できてるみたいだし、何か心の奥にもう1つ鍵がかかってるみたい。」


「姫ちゃんの件でしょうか?」


「それはわからないけど、どこか冷めてるところがあるのよねぇ。お医者様ってそんなものなのかもしれないけど。」


「それは私も感じました。子供扱いされてるのかと思ったのですが違ったんですね。」


「大丈夫です。見るなら小さい方がいいって人ですから。」



「本間先生は処置室の外でもあんな感じなの?」


「基本、あんな感じです。ユミさんがいる時はちょっと違うかな?私も普段が裸で接してますから距離を測りかねてる感じです。」


「そこは年長者から歩み寄って欲しいよねー。」


「でも、セクハラとかあるから難しいのではありませんか?」


「普段裸でいるせいでセクハラの定義がわからなくなってるもんね。先生をよく知ってるユミちゃんに相談すればいいと思うよ。」



「綾さんもいずれはメスを使ったりするんですか?」


「私は助手ですからそういう話はありませんし、そもそもあれはできそうにないです。任せてもらえそうなのは、今のところ経過確認と処置の時の頭蓋骨の中の磁石の組み立てですね。」


「あ、そこの『ユミちゃん』で練習してるやつですね。」


「難しいんですよー。持って帰っちゃダメだって言われてるんでなかなか練習の時間も取れなくて・・・。」


「生理休暇もあるから週末に家で練習できるように、もう一度頼んでみれば?」


「そうですね。外部に漏れる可能性が低ければいいんでしょうから、何か考えてみます。」


「予定はないのですか?」


「友達と遊ぼうと思っても、仕事のことを訊かれたらどうしようとか考えて、予定を入れにくいんですよね。だから匿名で付き合ってるオンラインの友達としか遊べません。みなさんはどうしてるんですか?」


「それねー。私たちは基本スタッフ同士になっちゃうわね。彼氏もできないよー。付き合いが深くなると、仕事について触れないわけにはいかないから。寿退職した子は会員制のサロン勤務ってことにしてたみたい。それでも式は挙げなかったね。ちょっと出会いに期待してたんだけどなぁー。」



「今日の懇親会は大丈夫そう?」


「じつは、自分で提案したものの少し心配なんです。」


「利奈に任せておいたらいいと思うよ。有里が暴走しようとしても抑えてくれるだろうし。」


「本間先生のために途中で席替えをしたらどうですか?綾さんは先生の隣固定で、反対側は全員が入れ替わりで座るようにするといいと思います。」


「夜のお店みたいですね。」


「大サービスだよー。」

「あとね、最初のうちは少し暗くして欲しいかなぁー。私たちは下着の跡とか残ってるし。でもずっと暗いままじゃ練習にならないから、お酒が回った頃に明るくするとか。」


「更衣室の照明に調光機能はないんですけど・・・。」


「そのへんは利奈に言っとくよ。自分たちのことだから何か考えるでしょう。」


「よろしくお願いします。」

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