第87話 女子トーク④

「あっ、花ちゃん!」


 引き出しに入っていた花を見て岬のテンションが上がった。


「先生、花ちゃんだったら私でも支えられますよ!」


「残念ながら昨日のメンテナンスの経過を確認するだけだから、そういう仕事はない。」


「そうですか。残念です。」


 本当に残念そうなので、丈太郎が花を抱き上げて作業台に移しながら訊ねる。


「そんなに手伝いたかったのか?」


「いいえ、そうじゃなくて、花ちゃんは私のいち推しなんです。」


「そうか、やっぱりそういうのもあるんだな。」


「そりゃあありますよ。自分の理想に近い子を推すタイプと自分に近い子を推すタイプに分かれますけど。岬は自分に近い花ちゃん推しなんだよね。」


「花ちゃんは、私たち脂肪に恵まれなかった女子の理想でなんです!」


『脂肪に〜』というのは初耳だが、丈太郎でもここで綾の方を見ないだけの分別は持っていた。


「まあ、いつもの確認作業を見ていても面白くないだろうから、最後にヒップラインも確認しようか。」


 一連の確認作業の後で、花を横から抱いて作業台の上で膝立ちにさせたら、岬にとても感謝された。



「君らも懇親会に来てくれるのか?」


 丈太郎がシャワーを浴びながら訊ねる。


「私たちは今週は遠慮します。いろんな子の裸を見た方がいいでしょう?」


 陽子がニヤッと笑う。

 ひどい言われ方だが、裸に慣れるという意味ではその通りだ。


「先生のことも考えてくれてるんですよ。だからみなみさんと友紀さんも今回は不参加です。」


「有り難いことだな。また次の機会に飲もう。」

「日向、あとは任せた。」


 ぽん、と綾の肩を叩いて、丈太郎はシャワーを出て行った。


「陽子さん。私も終わりますからこっちのシャワーにどうぞ。そっちは私の身長に合わせてあるみたいなのでシャワーヘッドが低いでしょう?」


 陽子がトラベルセットを持って移動する。


「そうなんだ。ありがとう。こっちはこっちで高いけどね。」


「私がそっちに行ったら打たせ湯になってしまいますよー。」


「そういうことで。じゃあ私は準備室に居ますので。お弁当にしましょう。」



「お待たせしました。」


 綾が待っていると2人一緒に更衣室から出てきた。

 岬は白いワンピースのままだ。


「岬さん、着替えないんですか?」


「スタッフルームで着替えます。なかなかこんな機会はないので、もうちょっとだけこのままで。」


「この子本当はミュージアムまで裸で行きたいのよ。」



「お弁当、お揃いですね。」


「交代で作ってるの。今日は私の当番。」


「一緒に住んでると便利ですね。」

「見学してどうでした?それと、丈太郎先生の反応はどう感じましたか?」


「報告会で聞いてた通りだったけど、綾ちゃんが来るまでは本間先生が全部1人でやってたんだよね。凄いなぁ。」


「ヒップラインの修正は私が来てから始めたので、多分仕事量は3割ほど少なかったと思います。それも卒業生全員の修正が終わったら使うヒップリフターが決まりますから、少しは楽になる見込みです。」


「あれが大変そうですものね。」


「そういえば陽子さん、何かやってましたよね。」


「何のことかなぁ〜?」


 陽子がとぼける。


「陽子ちゃん、本間先生にいたずらしてたでしょう?」


「あれはしてたんじゃなくてたの。先生が女の体に慣れるための練習よ。」


「更衣室でも先生のおちんちんをつついてましたし、陽子さんも結構男性の裸に慣れてますよね?」


「弟がいるからかなぁ?誤解しないでね。」


「弟さん、幾つ下なんですか?」


「5つ。弟のあそこに毛が生えてから一緒にお風呂に入らなくなったかなぁ。だから毛が生えてないおちんちんが懐かしくって。」


「弟さんもあんなに凄いんですか?」


「まさかぁ。その頃中学生だよ?」


「今はあれぐらいになっているかもしれませんよ?」


「岬さんは会ったことあるんですか?」


「一度私たちの部屋に遊びに来たんです。イケメンですよ。」


「あの時はレズ疑惑をかけられたりして大変だったよ。私が岬を裸にしてるんだと思われて・・・。あの子も大変だったみたいだけど。」


「すぐ帰ってしまいましたね。」


「そりゃあね。裸の岬は童貞には目の毒でしょうよ。あれから遊びに来てくれないし・・・。」


「私の裸に反応するのならロリコンの疑いがありますね。」


「お姉ちゃんにおもちゃにされたのがトラウマになってるんじゃありませんか?」


「姉弟のスキンシップだったんだけどなぁ。」

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