第86話 質疑応答
更衣室での質疑応答は、結局全員全裸ですることになった。
綾と丈太郎は、昨日話した通り全裸でいることに慣れるため。
岬はそもそも服を着る習慣がない。
陽子は白衣を渡されたが、今まで全裸で居たのに自分だけ服を着るのには抵抗があった。
その3人が丈太郎の元に集まる。
「先生、手を見せてください。」
懇親会のために部長が用意したのだろう。2つに増えたベンチに向かい合わせに座ったのだが、綾の反対側に岬が移動してきて丈太郎の手を取る。
陽子は反対の左手だ。
正面で前屈みになっているので、只でさえ大きな胸が重力に引かれてゆらゆら揺れる上に、その向こうには彼女の濃いめの隠毛が見える。
岬も横から密着してくるので、柔らかさはあまりないものの彼女の体温と滑らかな肌触りが丈太郎を刺激する。
「これは手タレレベルですね。」
「女の子でもなかなかいませんよ。」
2人して指を撫でながら感心している。
「こことのギャップが凄いです。」
陽子が勃ち上がってしまった丈太郎の陰茎をつついた。
「そこは関係ないだろう。」
丈太郎が少し腰を引きながら抗議する。
「どんなにお手入れしても骨格はどうしようもありませんよね。どこかのお坊っちゃんで、お箸より重い物を持たずに育ったとかですか?」
「そんなことはないぞ。確かに田舎の古い家だが子供の頃は剣術なんかも仕込まれた。」
「それでこれですか?この指の細さを見れば信じられないほど器用なのも少しは納得できますね。」
「もういいだろう?他に質問は無いか?」
陽子と岬は向かいのベンチに戻った。
今度は綾が、空いた左手を自分の太腿に載せて撫でているが、彼女は質疑に関係ないので少しくすぐったいが撫でさせておく。
「ミュージアムで卒業生は首で吊られて立ってますが、明里ちゃんみたいに筋肉質で体重が重めの子は首が伸びたりしないんですか?」
「川田が定期的にCTを撮ってるが、そういう話は聞かないな。ミュージアムのマグネットも荷重に合わせて下がるようになってるんだろう?」
「それはそうですけど、和服なんかを着せるときに心配なんですよ。」
「現状では重い衣装が続かないように考えてもらうしかないな。」
「処置するときに大きな子と小さい子ではどちらがやりやすいんですか?」
大柄な明里を支えていて思ったのだろう。岬が訊いてきた。
「大きいか小さいかでは小さい方が楽だが、何よりも出産に耐えられる体になっていることが条件だ。俺の腕は赤ん坊の頭よりは細いが、元々の入り口が細いと切開するにしても限度がある。今の市川なら大丈夫だろうが、高校生の頃だったら川田に任せることになるだろう。」
股間に手をやった岬が「帰ってからにしなさい!」と陽子に叱られたが、丈太郎も綾に「あそこは出口ですよ。」と指摘された。
「展示の時にポーズを取れるようにできませんか?」
「そうだなぁ。着替えの都合もあるだろうから固定するのはマズいだろう?適切な筋肉に薬剤を注射するなら衣装を着せた後でポーズを取らせるのは不可能じゃないが、薬剤の量も厳密に計算する必要があるから大変だぞ。それに薬剤がナノマシンに分解されるにつれて緩んでくる。」
「朝、見たらポーズが変わってたら怖いですね。」
「今も外付けでやってるんだろう?」
「見えないところならサポーターで固定したりしてますけど、体のラインを考えると膝ぐらいしかできないので。」
「指ならそんなに難しくないかもしれんな。川田に相談してみるといい。あっちが専門だ。」
「本当ですか!手に表情が出せると助かります。」
「先生、いいんですか?またユミさんの仕事増やして。」
「たいした手間にはならないだろう。一度講習会をしたら筋肉注射ぐらいミュージアムスタッフでもできる。」
「それよりいつまで俺の手を握ってるんだ?」
綾は丈太郎の手を自分の下腹部に抱いているのに気付いて慌てて手を離した。
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