第83話 明里(陽子・岬)
丈太郎が卒業生を作業台に移していると、綾たちが処置室に入って来た。
いつもと違い、岬・綾・陽子の順だ。
岬はまるでお風呂に入るように何も隠さずペタペタと、綾は簪で髪を纏めながら、陽子は胸を隠す訳ではないものの、両手を縮めて心細そうに歩いて来る。
先頭の岬は小柄で胸も小さく細身というよりは痩せっぽちで、しっかり生え揃った隠毛がなければ小学生にさえ見えてしまう。
姫と似たような体格なのだが、こちらの方が幼く見えてしまうのは、同じ痩せているのでも健康的なせいだろう。
「市川くん、奥にある作業台を持ってきてくれるか?」
丈太郎は岬を使うことにした。
全員が揃ったので説明を始める。
「広瀬明里。大学生だった。死因は凍死、登山中の事故だ。」
長身にショートカット、スレンダーな体型。
顔立ちもシャープなので、男物を身に付ければ美少年で通るだろう。
「確かに美形ですけど、彼女みたいなタイプでもいいんですか?」
美少女ばかりが展示されていると思っていた綾が訊ねる。
「会員にはご婦人もおられるからな。」
ちなみに完全会員制のミュージアムに名前は無い。『美少女ミュージアム』は通称だ。
明里は女性にしては筋肉が付いていて引き締まった体をしている。
陰毛は無い。
「これは・・・剃ってるんですか?」
「見せ方ね。この子は完全に女性向きだから。」
陽子によると、陰毛は男性にも女性にもあるが、それを無くすことで中性的に見えるんだそうだ。
そうは言っても丈太郎によってM字に開かれた股間にはしっかり女性器がある。
明里のそれは慎ましく口を閉じていたが、丈太郎の指によって開かれメスが入れられた。
綾が作業台に並べたインナーコルセットの切れ端を陽子が手に取って検分している。
今まで何人かがそれを手に取ったことがあるが、肉ではなく骨の部分に興味を持っている様だ。
「軟骨って言っても結構柔らかいのね。これならお腹を触ってわからなかっても仕方ないよね。」
「明里ちゃんは腹筋があるからなおさらだね。」
2人は見学が始まるまで自分たちがインナーコルセットの存在に気付かなかったことに思うところがあったのだろう。
「補強というより腹圧の代わりだからな。」
丈太郎が切り出しながら補足する。
「腹圧って内臓が出てこようとする力ですよね。」
と言いながら、陽子と岬がお互いのお腹を触り合う。
「それじゃあわからんだろう。後ろから両手で締め上げるようにしてみろ。」
「あ、結構入ってる。」
「陽子のおっぱい気持ちいい〜。」
陽子の胸が岬の肩のあたりで潰れている。
古いインナーコルセットの取り出しが終わったので、腹腔内に溜まった血を排出させるため、明里の上体を起こしたが、今回は岬が1人で支えることになった。
お尻のサンプルになってくれるのが陽子だけなためだ。
裸族なりの羞恥心があるらしい。
「すみません。本間先生に見せるのはちょっと・・・。ゆかりの動画に私のも入ってますからそれで勘弁してください。」
「これは強制じゃないから気にしなくていい。動画だけでも十分有り難い。」
「石原くんもやめていいんだぞ。」
「いいえ、岬が普通なんだと思いますけど私たち卒業生は違うんです。綾ちゃんならわかってくれるかもしれませんけど、母性っていうか後輩のために何かやってあげたいって気持ちが強いんです。自己満足かもしれませんけど・・・。」
「恥ずかしくない訳じゃないんですよ。」
陽子は強い口調で宣言した後で小さな声で付け加えた。
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