第80話 報告会②

 作業手順に沿った報告が終わると、雑談という名のまとめに入る。


「綾ちゃんの相談もここで話してくれていいけど、その前に初対面の3人を紹介するね。」


「陽子の隣にいるのが市川岬。」


「市川岬です。明日、陽子と見学に伺いますのでよろしくお願いします。」


「さっきから『変態』を連呼してたのが山崎萌。」


「山崎萌です。変態は冗談だからね。私には無理だけど。」


「ゆかりの隣が上川真澄。」


「上川真澄です。ゆかりさんと同じヘアアレンジ部門です。」



「日向綾です。よろしくお願いします。」



「有里、昨日の飲み会の報告もしてよー。」


「そうだよ。人数制限で譲ったんだから。」


「じゃあ私から。飲み会の前半は今までヒップアップした卒業生のお尻の穴の画像をを見比べての検討会。解剖学的な話もあったけど、私たちに関係あるのはミュージアムは卒業生のヒップラインを綺麗にしたいのか、それとも生きてる時に戻したいのかって話だったね。」


「それって何が違うの?」


「整形したかっこいいお尻がいいのか、天然ものがいいのかってことだよ。」


「そりゃあ天然ものでしょう。でもちょっとだけオマケしてあげたい気持ちはあるね。」


「そうですね。私たちの仕事は綺麗な卒業生を会員のおじさまたちに見せることだではありませんものね。若い今のままでいたいって思ってた子も多い筈です。」


「綺麗に見せるのは私たちミュージアムスタッフに任せてもらえばいいんです。」


「お、友紀は男前だねぇ。」


「じゃあみんな天然ものってことでいいね?みなみが館長と相談してくれる?」


「任せて。」

「お尻ついでに本間先生が利奈と瞳の便秘事情も聞きたいって。」


「揉んでもらった方がいいんでしょう?それなら今度揉んでもらいに行って直接言います。瞳もそれでいいかしら?」


「恥ずかしいけど揉んでもらいます。」


「そこがいいんじゃない。でも便秘の時に揉んでもらわないとダメなのかしら?」


「そこは大丈夫ですけど、便秘の時に揉んでもらいたいんですか?」


 綾は利奈が心配になった。


「それは嫌かなぁー。お腹が張っちゃうし申し訳ない気持ちもあるし・・・。恥ずかしいの種類が違うんじゃないかしら?」


「そうだね。私もスカトロとか嫌だしね。あ、でもオシッコぐらいはいいかなー。」


「有里さんは他所で楽しめる場所を見付けてください。」


「綾ちゃん、そんなつれないこと言わないでよー。来週レーシックするからよろしくね。」


 ラスボスが来る。


「処置室ではオシッコ禁止です。」



「後半は姫ちゃんの動画鑑賞会だったね。」


「何それ羨ましい!」


「多分、研究室で姫ちゃんを褒め倒したら見られるよ。ユミちゃん自慢したそうだったから。」


「うー。なかなか行く機会が無いんだよねー。」


「内容は瞳に任せた方がいいかな?」


「任せてください!」


 瞳が張り切る。


「研究室のユミちゃんの私物の大型モニターでは、仕事で使うとき以外ずっと姫ちゃんの動画がランダムに再生されてるんです。小学生の頃からの動画が全部入ってるそうですよ。どこかに本間先生も写ってるそうですけど昨日は見つかりませんでした。」


「「それも見てみたいー。」」


「かわいい姫ちゃんがいっぱいでしたけど、毎年誕生日に撮ってたヌードもあったりして見所満載です。」


「ユミちゃんは昔からシスコンだったんだね。」


「この動画も凄かったんですけど、昨日はもっと凄い事実が発覚したんです。」


 遂に瞳が立ち上がった。


「なんと、姫ちゃんは本間先生の奥さんだったんです!」


「「「「?」」」」


「瞳、順を追って話さないとみんなわからないわよ。」


「姫ちゃんって中学生じゃなかったの?」


「あ、まずそこからでしたね。姫ちゃんは高校生です。高校には一度も行けなかったそうですから中学生に見えるのは病気のせいで発育が悪かったんだと思います。」

「そして丈太郎先生が大好きだった姫ちゃんは、夢の中だけでも先生のお嫁さんになれるように16歳になるのを待って処置を受けたんです。」


「乙女だったんだねぇ。」


「それを知っていた丈太郎先生は、姫ちゃんの16歳の誕生日に婚姻届を出してあげて、現実でもお嫁さんになれた姫ちゃんは幸せな気持ちのまま処置を受けたんです。」


「つまり本間先生はバツイチでユミちゃんは義理の姉ってこと?」


「元兄妹って言ってましたけど。」


「この場合、元姉弟じゃない?」


「そこはユミちゃんの『姫ちゃんだけのお姉ちゃん』ってこだわりだと思います。」


「「「有りそー」」」



「それについて、最新情報があるんだよ。」


 みなみが得意そうに切り出した。


「午前中にの見学の時に聞いたんだけど、卒業生たちと違って姫ちゃんには脳とオリジナルの眼球と子宮と卵巣が残ってるんだって。」


「「「えー!」」」


「初めての処置だから腐りにくいものは残したとか?」


「そうじゃないみたい。姫ちゃんとユミちゃんと本間先生の3人で決めたんだって。」

「眼球は本間先生の希望だったらしいから、脳はユミちゃん、子宮と卵巣は姫ちゃんの希望だったんじゃないかな?お嫁さんが子供を産んであげられない体じゃ申し訳ないと思ったんじゃない?」


「なんだか生々しい乙女心だねー。」


「いじらしいですー。」


 瞳がまた泣き崩れた。



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