第78話 裸族

 丈太郎が話があると言うので、2人は更衣室で休憩している。

 いつもはタオルで股間を隠している丈太郎だが、今日は起立した陰茎を隠していない。

 先程のことで丈太郎を刺激してしまった自覚がある綾は、みなみの言っていた『姫ちゃん助けてー!』の台詞を準備していた。


「君が助手になってから、処置室での作業は順調だ。卒業生のヒップラインの改善も考慮すれば期待以上だと言ってもいい。」


「ありがとうございます。」


 綾は何の話が始まるのだろうと思った。


「しかし労働環境としては決して良いものではない。裸でいることにお互いが過度に気を遣い合い、見ないふりをし、我慢をしている。幸い俺は今日1つの枷を外してもらったが、さっきの事も手術中のドクターが汗を拭いてもらうようなもので、恥ずかしがるような事ではない。」


「でも恥ずかしいんだから仕方ないじゃないですか!」


 綾は赤くなって下を向く。


「そうだ、恥ずかしいと感じるのを否定しているんじゃない。今は恥ずかしいのを我慢している状態だ。これからは裸でいるのが恥ずかしくなくなる努力をしようじゃないか。」


「それが今のその格好ですか?」


「その1つだな。ずっとおっ勃ててれば単なるセクハラだが、男のこの器官はデリケートなんだ。興奮すれば勃つし怯んだり傷ついたりしたら小さくなる。内心をさらけ出しているようなものだ。俺は君に心を許して休憩の時も心の窓であり最大の弱点でもあるここを隠さない。君はそれに慣れつつ自分が裸でいることに慣れて欲しい。」


「心の窓は瞳でしょう?」


 心を許してもらえるのは嬉しい気がするが冗談半分なようで、いまひとつ信用できない。


「服を着ている時はな。男の場合、裸の時はここだ。」


 と丈太郎は指を差す。


「私の裸を見慣れたら、先生のおちんちんは勃たなくなりますか?」


「確約はできないが、少なくとも君が恥ずかしがらない限り普通に見ているだけでは勃たなくなると思う。川田の裸では勃たないからな。」


 女としては複雑だが、仕事のためなら仕方ないのだろうか?


「1つということは他にもあるんですね?」


「裸でいることに慣れるために弁当も裸のまま更衣室で食べると尚良い。あと、過度なスキンシップは必要ないが、体が触れることに慣れるためにシャワーを浴びるときに背中を流し合ってはどうかと思う。」


「お弁当はお行儀が悪いからダメです。裸でやるなら飲み会ですけど、酔った勢いで襲われるのが怖いので2人きりはお断りします。シャワーは・・・背中だけですよ。」


 綾は友紀に背中を流された時の気持ち良さを思い出した。


「そのうちに俺が紳士だってことがわかるだろう。飲み会は川田を呼ぶのか?あいつを入れると長くなるぞ。」


「ゆかりさんや有里さんあたりは誘ったら参加してくれると思います。ちょっとお触りが怖いですけど友紀さんも。」


「女の子で触られるのに慣れるって手もあるぞ。」


「私がそっちに目覚めちゃったら責任取ってもらえますか?」


「その場合俺はどうやって責任取るんだ?」





「今日の責任と言っては何だが、俺のも触っていいぞ。」


「今度元気すぎるときにお仕置きしてあげます。」


 丈太郎の陰茎が項垂れた。

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