第76話 綾子
オフィスに戻るといつもの様に丈太郎が訊いてくる。
「今日はどんな話をしていたんだ?」
「先生に話せる内容はありません。」
「そうか。どうせ俺の悪口なんだろう?」
「あのなぁ。あの環境で常時勃たないようにするってのは、呼吸を浅くしたり急に動かないようにしたりして大変なんだぞ。」
「そんな事してるんですか?」
「呼吸はわからなくもないですけど、どうして急に動いちゃダメなんですか?」
「動いた後にフッと力が抜ける瞬間ができるんだよ。津田静を落としそうになった時は力が抜けた瞬間に視覚に刺激が来たからヤバかったな。」
「わかりましたから、思い出さないでください。」
「私が慣れればいいんですよね。」
「そうしてもらえると助かる。」
綾がシャワーを浴び終えて簪で髪を纏めていると、丈太郎がいつものように先に処置室に入らずに話しかけてきた。
「来週のことだが、堀江くんに月曜から3日間ヘルプを頼もうと思う。木曜から復帰できるように調整してもらえるか?」
綾がそのままで丈太郎を見ると、陰茎はもう上を向いている。
「はぁ。わかりました。ピルは結構正確なみたいですから、土日もあれば初めてでも合わせられると思います。生理休暇は2日ですよね?月・火と取って水曜はどうしましょう?」
「午前中は『ユミちゃん』と練習して、午後はミュージアムの見学に行くといい。」
「それじゃあメンテナンスが終わったら報告会を見にいって瞳ちゃんに見学の予約しておきます。」
「そんな約束があるのか?」
「本当は水着企画が始まってから案内してくれるって話だったんですけどね。」
「その時は俺も見に行くから教えてくれ。」
やっぱり40歳のおじさんだ。
いつものように引き出しを開くと、そこにはプラチナブロンドの美少女が横たわっていたので綾が驚いていると、丈太郎がいつもの説明を先にしてくれた。
「市川綾子。高校生だった。死因は刺咬昆虫によるアナフィキラシーショックだ。」
「どう見ても日本人じゃないんですけど?」
「日本人だ。国際養子縁組らしい。」
「北欧かラテン系に見えますね。」
「人種が違っても君の後輩だ。しっかり頼むぞ。」
「もちろんです。」
綾子を作業台に移し部屋の真ん中に移動すると、2人で綾子にお尻を突き出した姿勢を取らせて、支える役を交代しながら交互に彼女の肛門と肛門拳筋を調べる。
白人の彼女のそこは、今まで見てきた色白の卒業生の誰よりも色が薄く、ほとんど境目がわからない。性器の色も少し赤みが濃いだけだ。
色素が薄いせいでほとんど全員に見られるホクロもない。
「これは肛門拳筋だけで判断するしかなさそうだな。」
「細いですよね。」
「そうだな。日本人より腸が短いから便秘になりにくいんだろう。」
「そうなんですか?」
「長けりゃ詰まりやすいし、水分もその分吸収されるからな。」
綾子を仰向けに戻して両脚をM字に開かせ、膣前庭にメスを入れる。
肌の色が白いせいで流れ出す血がいつもより鮮やかに映る。
陰毛は一見生えてなさそうに見えるが、色が薄いだけで産毛のようなものがそれなりに茂っている。
綾は実際に白人女性の裸を見るのが初めてなので、丈太郎がインナーコルセットを切り出している間、長身の彼女を興味深く観察した。
綾子の髪は細く透き通るようなプラチナブロンドで、腰の上まで柔らかく流れている。
目鼻立ちははっきりしていて各パーツが大きく、瞳の色はスカイブルー、睫毛は色が髪と同色なので目立たないが信じられないぐらい長い。太めの眉は意外にも栗色だ。鼻は日本人よりは高いのだが高すぎるほどではなく、鼻筋は通っているが鼻の頭だけが少し上を向いている。
口は大きく、上唇に比べて下唇が厚めなのがエロティックに見える。
細い顎は少ししゃくれている。
体は細身で胸も日本人基準でも小さめだが、肩幅があるせいもあって骨太に見える。
腰のくびれがはっきりしているせいか、そんなに大きくないお尻が貧相に見えない。
当然、胴は短く手足と首が長い。
髪の色もあって、午前中にメンテナンスした花より妖精っぽく見えそうなものだが、骨格と目鼻立ちのせいで負けている。妖精のイメージはヨーロッパのものだが、もっと若い少女が元になっているのだろう。
「妖精というよりファッションモデルかマネキンみたいな子ですね。」
「体格のせいでそう見えるのかな?ずいぶん目力のあるマネキンだ。」
綾子の上半身に回っていた丈太郎が、彼女の顔を覗き込みながら答えた。
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