第69話 みなみ・友紀

 翌朝、処置準備室で丈太郎を待つ3人の話題はどうしても昨日の飲み会になる。


「私も参加したかったです。」


 昨日非番だった友紀が残念がっている。

 昨夜みなみから電話で聞いたらしい。


「それにしても本間先生とユミちゃんにあんな秘密があったとはねー。2人の仲が怪しいって噂はあったけど、3人だったんだね。」

「あんなことがあったんじゃ、あの2人はどうやってもくっ付けないよ。」


 1人だけ素面しらふだったみなみがいちばん驚いたようだ。


「シスコンのユミさんですしね。」

「あの後、瞳ちゃんは大丈夫だったんですか?」


 昨夜は椅子など処置準備室の備品も持ち込まれていたので、綾は最後まで研究室の片付けを手伝ってから帰ったため心配していた。


「瞳なら大丈夫。あの子は感動屋だから結構昨日みたいなことがあるの。」



「あー。私も姫ちゃんの動画見たかったなぁー。」


友紀がまだ残念がっている。


「また機会があるよ。そのためには卒業生のお世話を頑張ってユミちゃんの役に立ちなさい。」


「そうですよ。お尻を上げた卒業生は、しばらくはミュージアムでも様子をみてもらわないといけませんから。」


「最近、お尻ばっかりですね。後輩たちのお尻が綺麗になるのは嬉しいですけど。」


「ああ、友紀は特にそうかもね。最初の報告会でオンライン中継用のカメラマンやってたから。」


「最初は楽しかったんですけど、お尻の穴ばかりで途中で訳がわからなくなりました。」


「最初だけでも楽しめるのは、あなただけだから適任だったんだよ。」



「友紀さんって、やっぱりそっちなんですか?」


 綾は歓迎会から気になっていた事を訊いてみた。


「よく誤解されますけど、レズビアンじゃありませんよ。私が好きなのは女の子の体。別に男嫌いでもないし。」


「友紀は安全だよー。ちょっとお触りが多いだけ。ミュージアムスタッフとしては最高の変態だね。」


「個性の範囲です!」


「処置室で作業中は触らないでくださいね。」


「TPOはわきまえてます。」



 いつもの時間になっても丈太郎が来ない。

 綾がオフィスに見にいこうか迷っているとドアがノックされた。


「はーい。どうぞ。」


 部長だった。

 丈太郎はノックしない。


「本間君は10分程遅れる。先に入って準備しておいてくれということだ。」


「わかりました。」


 部長はドアから顔を出しただけで帰って行った。



「これは二日酔いだねー。」


 みなみが嬉しそうに言う。


「夕べはしっかりしてたと思うんですけど、丈太郎先生ってそんなにお酒弱いんですか?」


「知らない。」「知りません。」



「まあ、中に入りましょうか。何か質問があれば更衣室で。」


 と綾が言うと、友紀が嬉々として女湯の暖簾に向かう。


「友紀さん、怖いです。」


「大丈夫、痛くしないから。」


「悪乗りしてると退場させますよー。」


「ごめんなさい。もうしません。許してください。」


「綾ちゃん、大丈夫だよ。友紀は女子校のノリが抜けてないだけだから。本間先生が来たらおとなしくなるから。」



 更衣室で全裸になると、改めて確認する。


「何か質問はありますか?」


「大丈夫。」


「バッチリ予習済みです。先生。」


 綾は全裸の2人を前にして、今回は心の平穏を感じていた。


 みなみの背は高いが、全員バストは似たようなもので高校生の平均程度、お尻はやや綾が大きいぐらい。腰のくびれはさすがに高校生よりはあるが、高校生の平均というのが1年から3年までの平均なので、全体的に見ると高3には負けているだろう。


 友紀のテンションの高さは不安だが。



 綾が男湯側でシャワーを浴びていると、友紀が声をかけてきた。


「綾さんお背中流します。」


「え、う、大丈夫です。」


「綾ちゃんもやってもらいなよー。気持ちいいよ。」


 みなみが勧めてくる。


「気持ちよくしてもらわなくていいですー。」


「あはは、綾ちゃんエッチー。その気持ちいいじゃないよー。本当に気持ちいいから。」


「そんなこと考えてません!じゃあお願いします。」


 ボディーシャンプーでヌルヌルの友紀の手で背中を洗ってもらうのは本当に気持ちよかった。



「最終確認です。タンポンはいれてませんね。」


「綾ちゃん見る?それとも手で確かめる?」


 と言って後ろを向いたみなみに合わせて友紀も後ろを向く。

 2人とも脚が細いので太腿の隙間から性器が覗いている。


 ちょうど3人が同じ方向を向いた時に入り口から丈太郎が入ってきた。


「すまん。遅くなった。」


「先生、どこまでやっておきましょう?」


「姫を作業台に載せておいてくれ。宮崎、井上くんよろしくな。」


 3人とも処置室の扉の前で入口の方を向いていたので、男湯側から入ってきた丈太郎にも丸見えだ。


 固まっていたみなみと友紀は


「よろしくお願いします。」


 と手を体の前で合わせてお辞儀をする。


「はい。タンポンはいれてませんね。」


 2人がお辞儀したので見えてしまった。


「綾ちゃんのえっちー。」



「じゃあ処置室に入りましょう。」



「あー。びっくりした。思わず悲鳴を上げそうになったよ。」


 髪を簪で纏めながら歩く綾の後ろでみなみが零す。


「温泉の脱衣所風だから、うっかり女湯に男の人が入ってきたと思っちゃいました。」


「でも、あそこまで平然とされてるとプライドが傷つくよね。そりゃあ大した体じゃないけどさ。」


「丈太郎先生は、毎日私の体を見て慣れてますから。」


 と、綾に慰められて


「同じぐらいだもんねぇ。」


 肩を落とす失礼なみなみだった。


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