第66話 肛門祭り

 綾が瞳を連れて研究室に行くと、ドアが開いていた。


「お邪魔します。」


 瞳が緊張しながら中を覗く。


「瞳ちゃんいらっしゃいー。1人?」


「報告会が終わってから何人か来るようです。大丈夫ですよね。」


「いいよー。入って入って!」


 ユミと丈太郎がテーブルを移動させているので「手伝います」と言って、綾と瞳は椅子を運ぶ。


「姫ちゃんも参加させてあげないとねー。」


「「姫ちゃんこんばんわ。」」


 2人でカプセルの中の姫に挨拶する。


「姫ちゃんお友達が増えてよかったねー。」


 ユミはご機嫌だ。


 テーブルに酒瓶を並べながら、


「みんな座ってー。薫ちゃんは端末貸して。」


 ユミが丈太郎から受け取った端末を窓際に置かれたホワイトボードのポケットに差し込むと、端末のファイラーが表示された。


「こんなのあったか?」


「私物だよー。ほら。」


 丈太郎に訊かれたユミがホワイトボードの側面で何か操作すると、画面が切り替わり、白いリゾート風のワンピースを着た姫がカメラに向かって楽しそうに手を振る動画が表示された。」


「「可愛いー!」」


 瞳と綾から悲鳴が上がる。


「中学生の頃の姫だよー。薫ちゃんは憶えてるよねー。」


「ああ、俺が撮ったやつだからな。」


「姫ちゃん楽しそうだよねー。」



「「「「乾杯!」」」」


 まずは乾杯する。


 グラスが足りないので、容れ物は湯のみやらコーヒーカップやらバラバラだ。

 ユミはビーカーを使っている。

 女性陣はワイン、丈太郎はコーヒーカップにウィスキーだ。

 テーブルの上にはチーズやナッツ、お菓子類もある。

 動画は音は絞ったがそのままだ。


「姫ちゃん『薫兄かおるにい』って言ってましたね。」


「薫ちゃんに妹の様に懐いてたからねー。でも入院してからは『薫兄様』だったよねー。」


「たまりません!」


 瞳が震えている。



「川田、終わったらいくらでも見ていいから本題に戻ろう。画像を表示してくれ。」


「姫ちゃん、後でねー。」


 と言ってユミがモニターを操作して、肛門の画像を3つ並べて表示させる。

 お尻を支えているユミの手が微妙に性器を隠しているのが逆にいやらしい。


「一見普通のお尻の穴に見えますが、私たちと比べてちょっと横長じゃないですか?」


 瞳の感想だ。


「瞳ちゃんはこの中でいちばんたくさんの肛門を見てるんですよ。」


 綾が補足する。


「なんだか嫌な褒められ方ですね・・・。」


 と言いながら説明しようと瞳が立ち上がった時、ドアがノックされた。


「はーい。」


 とユミが返事したが、瞳がドアの方に向かう。



「私よりたくさんお尻の穴を見ている人が来ちゃいました。」


 瞳の後ろから、みなみ、有里、ゆかりが姿を見せる。


「「「こんばんはー。」」」


「いらっしゃいー。肛門にいちばん詳しいのは誰かなー?」


 3人が顔を見合わせる。


「ゆかりさんですよー。報告会の時、ゆかりさんは私のお尻の穴を見ましたけど、私はゆかりさんのを見てませんから。」


 確かにオンラインで参加していたゆかりは見せていない。

 くだらない事だが、瞳は意外に頭がいいのかもしれない。


 指名されたゆかりは前に出ると、


「人数オーバーなのでお酒を持って来ました。」


 と、一升瓶を差し出す。『ゆかり』だ。


「ありがとう。早かったねー。報告会やってたんでしょー?」


「有里さんが主催者権限で、今日は終わりにして明日続きをやることにしてしまいました。」


「ユミさん、これ美味しいんですよ。でもゆかりさんスタッフルームに置いてたんですか?」


 綾は先日の2次会で気に入ったようだ。


「あれからすぐ、ドローン便で頼んだんです。地酒ですから近所の酒屋さんにあるので。」



「みなさん。まずは姫ちゃんに挨拶ですよ!」


 瞳が仕切った。


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