第59話 結衣(ゆかり)④

 結衣の髪でヒップリフターを固定していると、ゆかりがおずおずと訊いてきた。


「もしお許しいただけるなら、結衣ちゃんの中に手を入れてみたいのですが・・・。」


 丈太郎は少し考えて、


「見学の枠からは外れているが、よく協力してくれたからな。興味本位では無いんだろう?」


「確かに興味もありますが、どちらかと言えばスキンシップの延長でしょうか?」


「いいだろう。撫でる程度で頼むぞ。」


「ありがとうございます。」



 綾に代わってゆかりが結衣の前に立つ。

 ゆかりは結衣の性器を優しい指使いで撫でると、


「結衣ちゃんごめんね。」


 と言うと、手の平を窄めて切開された膣に片腕を入れた。


「それほど暖かくはないのですね。」


「臓器がないから保温する必要が無いんだ。」


「確かに出血が止まっています。よかったぁ。」


 手を入れたかった理由の1つはこれを確認したかったのかもしれない。

 一通り結衣の中を確かめたゆかりは、そぉっと腕を抜いた。



 休憩のために更衣室に移動して質疑応答が始まる。

 綾とゆかりは白衣を着ているが、丈太郎は股間にタオルを掛けただけだ。

 陰茎の勃起は治まっている。


「次に新しい後輩が入ってきたら、今度は最初から処置するのを見学させていただけませんか?」


「君なら大丈夫かもしれないが、解剖の経験の無い子には辛いだろうな。日向でも途中で休憩が必要だったぐらいだから。ミュージアムとの協力体制は大切だから少なくとも連絡はするようにしよう。」


「ありがとうございます。」



「お尻の穴を引っ張ったことで、何か配慮してあげないといけないことはありますか?それとメンテナンスの間隔は短くなるのでしょうか?」


「川田が経過を診ているので、ミュージアムに引き渡す頃にはある程度わかると思うが、メンテナンスの間隔については今のところわからない。展示を始めてからも経過を診た方がいいから、見学に来た君たちには出来れば着替えさせる時に今日のように肛門周りに変化が無いかチェックして、気付いたことがあれば報せて欲しい。」


「報告会には卒業生以外も参加していましたから、みんな協力してくれると思います。」


「その報告会だが、いったいどんな話をしていたんだ?」


 ゆかりは少し言い淀んで、


「先生にはお話できない女同士の話もありますけれど、利奈さんと瞳ちゃんが見学してきた事を報告して、みんなが普段疑問に思っていた事を質問していました。その後で有里さんのお尻で揉み方を検討してから、みんなもパンツを脱いでお尻を揉み合っての意見交換です。」


 丈太郎のタオルが持ち上がっているが、後半は言っても良かったんだろうか?



「卒業生以外で見学に来そうな人は何人ぐらいですか?」


 綾が訊ねた。


「1人は陽子ちゃんと来るみたいですが、その他には2〜3人ぐらいですね。綾さんと仲良くなれば、もっと増えると思います。」


「今日も報告会はあるんですか?」


「毎回やることになっています。」



「取り出したインナーコルセットはどうなるんですか?」


「普通に医療廃棄物だが?」


「持ち帰って見学に来られない子に見せてあげられませんか?」


「法的にそれはまずいな。後で返却してもらうなら問題ないんだが。川田にいらないインナーコルセットが無いか訊いてみよう。無かったら画像を用意してもらう。」


「よろしくお願いします。」



「処置室で私たちはナノマシンを吸い込んでいるんですよね。影響はないんですか?」


 デリケートな質問が来た。


「俺は10年近く吸い込んでるんだ。ホコリみたいなものだから数時間ぐらいで影響が出るようなことはない。」


「美容に良いっていう噂がありますが?」


「無いな。」


「そうは見えませんが?」


 ゆかりが丈太郎の体を見て言う。


「俺と川田の他に、部長も部屋のメンテナンスのためにここに入ってるんだ。

 時間にすれば川田より長いぐらいだ。入り口の暖簾やそこの衝立とか脱衣籠は部長のセンスだぞ。」

「なんなら脱いでもらうか?」


「大丈夫です。」


 ゆかりは少し嫌そうに答えた。

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