第40話 スタッフルーム②
「陽子さんはメガネを外しても大丈夫なんですか?」
綾が確認したが、陽子のメガネは伊達らしい。
東館長に憧れて掛け始めたそうだ。
「メガネもそうですけど、マニキュアやペティギュアもダメですから、できれば前日のお風呂の前に落としておいてくださいね。」
「当然お化粧もよね。だからみんなで相談して朝にしたのよ。二度手間になっちゃうから。」
「それは正解です。他にもメリットがありますよ。」
綾は主に最初に見学に来ることになりそうな利奈と瞳に対して話すが、瞳は姫のことで頭がいっぱいみたいなので、利奈と話すことになっている。
「メリットって?」
「ここからは見学に来る人だけと話したいんですけど・・・。」
「私は仲間はずれ?」
有里が拗ねる。
「秘密にしてくれるならいいです。」
「約束するよ。」
みんなで顔を寄せ合う。
「瞳も聞いておきなさい。」
瞳も遅れて参加して綾の話を聞く。
「体に下着の跡が残らないようにブラトップにする話をしましたよね。でもパンツの跡は紐パンでも残るんです。」
「そこで紐パンで30分前に出勤してトイレで脱いでおくんです。これでパンツの跡は消えます。私も早出してますから大丈夫ですよ。」
「へー。綾ちゃん考えたねー。ということは、今は・・・。」
「見せませんからね!」
有里が指をワキワキしてからかうが、断固拒否だ。
「瞳は紐パン持ってるの?」
「今日、買って帰ります。」
「ところで」
と利奈が話題を変えた。
「姫ちゃんが1号ってことは、明日メンテナンスする子からヒップアップ(?)するのかしら?」
「あ、ヒップアップっていうのは正式な呼称じゃないから気にしないでください。正確には午後のメンテナンスの子からお尻のラインが綺麗になりますよ。」
「みんな〜。今日のメンテナンスからお尻が上がるってー。」
有里が立ち上がってみんなに教える。
「「「「きゃー!」」」」
周囲がざわつき始めた。
「夏に間に合うわね。やっと水着を着せてあげられるから買いにいかなくっちゃ!」
普段、落ち着いて見える利奈がずいぶんハイテンションだ。
「午後のメンテナンスは誰?」
「すみません。聞いてません。」
「じゃあ最後にメンテナンスした子は?」
「えーっと・・・金曜日のなつみちゃんですね。」
「じゃあ順番通りだったら静ね。同じ黒髪ストレートでも静の方がやる気が出るわぁ。」
なつみちゃんに失礼じゃないだろうか?
「お尻が綺麗になったからって、すぐに水着を着せると決まったわけじゃないでしょうが。それに利奈はなつみちゃんタイプじゃない?」
有里がまぜっ返す。
「うう、だからこそよ。みんなも早く水着を着せたい筈だわ。」
「でも、洋服を着ている子の中にポツンと水着は変じゃないかしら?まあ裸の子はそうなってしまっていますけど、私は何人か集めてビーチ感を出したいです。」
ゆかりが冷静な意見を出した。
「そうかもしれないけど、どうせ使い回すんだから見繕っておかないとね。」
「彼女たちが着ている服って何人かで共有なんですか?」
綾が部屋中にある大量の洋服を見ながら訊ねる。
「まあ似合わない子がいたりもするけど、基本はサイズ別に共有ね。制服なんかは完全に共有。たまに専用の衣装を持ってる子もいるけど。」
「火曜にみなみに会ったとき緑ちゃんを見なかった?」
「ああ、巫女服の。脱いだ後でしたけど。」
「間に合わなかったかぁ。めちゃくちゃ似合ってたんだよ。わざわざ買った甲斐があったよ。」
有里が熱く語る。
「高校の制服はほとんどのタイプが揃ってるんですよ。多分、綾さんが卒業した高校に似たのもあります。春には制服フェアもあるんです。」
今度は友紀だ。
「あれは着せ替えが大変だねー。1日休館しなきゃならないし。」
「それだけの価値はあります!」
友紀は制服フェチなんだろうか?
「ここにいるとお下がりがもらえたりします?」
「それはないわね。マネキンに着せてるのと同じだから痛まないし。着せなくなるのは流行から大きく遅れてからだからもらっても困るでしょう?」
「だからおじさんたちにプレゼントするんだよねー。そういうの好きな人も結構いるみたい。」
「奧さんとかに見つかったらどうするんだろうね。」
「日向さん?」
突然声をかけられて振り向くと東館長だった。
綾は立ち上がって
「お邪魔しています。焼肉美味しかったです。」
とお辞儀をした。
東は微笑みながら、
「それは良かったわ。明日からスタッフが見学させてもらうからよろしくね。」
と言って立ち去った。
「さて、お仕事しますか。」
と言って利奈が立ち上がる。
「館長に見られちゃったからねー。」
と有里が続く。
「「明日、よろしくねー。」」
と見学予定の2人に見送られて綾はスタッフルームを後にした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます