第25話 閑話

 裕美のメンテナンスを終えた2人は更衣室で休憩している。


「川田さんは体もアラフォーには見えませんね。シャワーを浴びてすっぴんになっても全然変わりませんし、腹筋が割れてなくて安心しました。」


「あれは自分でも作っているし、体内にナノマシンを注入するのと環境から取り込むのは違うから安心するのは早いと思うが?」


「じゃあ腹筋が割れ始めたら辞めます。」


「それほどか!」


「冗談ですけど、結構深刻な問題ではあるんですよ?」


「是非、辞表を出す前に川田に相談してくれ。あいつは人体改造の専門家だ。」


「そうします。」


 綾が話題を変える。


「先生、私はミュージアムには入れないんですか?」


「いや、部長にカードを作ってもらえば入れるが、どうしてだ?」


「昨日、今日で先生が女性の体に興味が無いことがわかったので、私が勉強しようと思って。」


「おいおい、その言い方は語弊があるぞ。俺は興味が無いんじゃなくて、男の場合どうしても自分の好みに引っ張られてしまうから、敢えて淡白に振舞ってるんだ。ミュージアムが俺好みの姫ばかりになったらマズイだろう?」


「それにしても丈太郎先生が宛にならないことに変わりはありませんから、私が目を肥やしておくのはプラスになる筈です。」


「まあそれはいいんだが、見に行くのは夜の部以外にしろよ。若い女の子がいるとおじさんたちが居心地悪くなるから。」


「じゃあ夜は宮崎さんたちはいないんですか?」


「東館長が一手に引き受けている。あれぐらいの年齢になるとおじさんたちも遠慮がなくなるらしい。」


「大変なお仕事ですね。」


「そうだな。営業活動でもあるからミュージアムスタッフには任せられないというのもあるらしい。」


「営業ですか?」


「自分が奨学金を出資していた子を見た出資者に、また出資しようと思ってもらわんとな。だからたまにだが入ったばかりの卒業生を連れて歩くこともあるらしい。」


「生贄ですか?」


「あんまりな言い方だな。そういう側面もあるかもしれないが、自分が奨学金を出していなくても卒業生から礼を言われればいい気分になるだろう?一部の出資者は生きた本物に会えることにもなるから尚更だ。」


「私にも声がかかるでしょうか?」


「君の場合は直属の部下じゃないから無いだろう。希望を出してみるか?」


「明日の歓迎会でどんな感じか聞いてみます。」


 少し怖いが興味もある綾だった。



 その後は理沙の状態の確認をして、1日の仕事が終わる。


 帰り際、透明の頭蓋骨を抱いた綾に、


「先生、エミちゃんの中に入れるブロックはいくつ買ったらいいですか?」


 と訊かれて、丈太郎は


「川田の脳味噌の大きさは知らんが、50個ぐらいは要るぞ。領収書を切ってもらえよ。」


 と答えた。

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