第23話 ユミ
肛門と脇の下を確認すると、友里恵を引き出しに戻した。
引き出しを閉めるとき、丈太郎は、
「悪いな。次のメンテナンスで綺麗なお尻にしてやるからな。」
と声をかけていた。
「昼にしようか。」
更衣室で服を着ると、2人でオフィスに戻る。
丈太郎は相変わらずコンビニ弁当、綾は手作りのサンドイッチだ。
食べながらメンテナンス後の話をする。
「メンテナンスをした姫は、だいたい24時間後に状態の確認をする。
そこで切開部分が塞がっているのを確認したら、もうナノマシン環境下でなくても
大丈夫だから通常の環境でインナーコルセットが完全に癒着するのを数日待つ。
メンテナンスではなく、初回の処置の場合は体の内部がナノマシンに作り変えられるまで、そこからだいたい1ヶ月かかる。」
「処置室を出たら川田の管轄だが展示計画もあるので少しはミュージアムスタッフも関係してるな。明日の歓迎会では林田友里恵のことをたくさん聞かれるぞ。」
「川田さんも仕事が多いんですね。」
「休みが無いという意味ではそうだな。あいつはほとんど研究室に住んでいるようなもんだ。」
「ナノマシンはずっと体内に居るんですよね。故障率とか大丈夫なんですか?」
「そう言えば、川田が待機中の姫に人工透析みたいなことをしてるな。」
途中でサンドイッチを食べ終わった綾は三つ編みを作りながら聞いている。
「彼女たちはいつまで今のままでいられるんですか?」
「いちばん古い姫でもまだ10年経っていないから、正直なところはわからないが、
死んだ後も年齢が加算されるとして200歳とかは無いな。一応今でも生命活動してるんだから。」
「先生、女性に古いはダメですよ。でもその子は奨学金が始まる前ですよね。」
「だから研究室に居る。ミュージアムで展示しているのは奨学生だけだ。奨学金をもらってない子をタダで見せてやる義理はないからな。」
話していると
「薫ちゃん、処置室に行こー。」
と言ってユミが入ってきた。
「お前昼飯は?」
「食べたらお腹が出るじゃん。後で食べるよー。」
綾は目を逸らした。
処置準備室に着くと、綾とユミは女湯の暖簾のかかった入り口から更衣室に入った。
「これ部長が作ったんでしょー。」
「そうらしいです。」
「綾ちゃんお肌綺麗だねー。」
「恥ずかしいから大きな声で言わないでください。衝立の意味がありません。」
朝はパーティションが2つの入り口を隔てていたが、今は温泉風の衝立に変わっている。
部長は諦めていなかった様だ。
「綾ちゃんノーパンなんだ。」
言われて声を落としたユミは、服を脱ぎながら話し続ける。
「会社に着いてからですよ。下着の跡が付きますからね。」
「女の子だねー。」
裸になった2人は一緒にシャワーを浴び始めるが、ユミのおしゃべりは止まらない。
「どう?薫ちゃんにセクハラされてない?」
「裸になってる時点で何がセクハラだかわからなくなりました。」
「そんなの一緒だよー。体に触ったり必要以上にくっついたらセクハラ。どこ見てるかなんて服を着ててもなかなか証明できないからねー。」
「それならされてませんけど、おちんちんを立てるのはセクハラじゃないんですか?」
「そんなことあったんだぁ。薫ちゃんだって男の子なんだから、そこは許してあげようよー。私たちだって見えないだけで濡れちゃうことあるでしょー。」
普段は先にシャワーを終えて処置室に入る丈太郎だが、綾の三つ編みの件もあるが、ユミが綾に何を吹き込むか心配なので、ゆっくりシャワーを浴びながら2人の話を聞いていた。
シャンプーを終えた綾が丈太郎の方に来る。
三つ編みをつまんで、
「先生、どうですか?」
「触ってもいいか?」
綾に許可を求めてから彼女の緩めの三つ編みを手の平に載せて押してみる。
「なになにー?仲良く何してるのー?」
ユミもやってきた。
慣れているのか全裸でも堂々としたものだ。
白衣で隠れていたがモデルの様なナイスボディーだ。
ファッションモデルの様な痩せぎすではなく、女性の理想を体現した下着モデル体型。
ピンクの乳輪を載せた乳房がツンと上を向いている。
陰毛は無い。
「髪を纏める時の三つ編みを毎回作らなくてもいい様に、最初から編んでおく実験をしてるんです。」
綾が答えると。
「なんだー。それなら
丈太郎と綾は顔を見合わせた。
「それは思い付かなかった。日向は簪を使ったことはあるか?」
「ネットで調べてみます。」
思いがけず問題が解決したので、綾は三つ編みを解いて濯いでから髪をまとめ直した。
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