第9話 緑
丈太郎が1つのショーケースの前で立ち止まった。
「彼女が緑さんですか?」
横に並んだ綾もショーケースを見ながら訊ねる。
名札のような物は見当たらない。
「黒木緑。いちばん最近処置した姫だ。ちょうどお当番の様だな。」
ショーケースの中には全裸の美女が佇んでいた。
20代前半に見える美女だ。
大人しそうな表情は伏し目がちなせいだろうか?
眉の上で切り揃えられた真っ黒な髪は腰の上まであり、色白で華奢な体格も相まって巫女の様である。
色白ではあるが、先ほどまで見ていた友里恵と違い、生者の肌色だ。
乳輪も濃いめのピンク、陰毛は結構茂っている。
足元に緋袴の様な着物が畳んであるのが見えるので、先ほどまで本当に巫女の衣装を着けていたのかもしれない。
「わざと片付けなかったな。」
と言いながら丈太郎はまだ開いているショーケースの裏側に回る。
体を支える支柱のような物は見当たらない。
「先生、彼女たちはどうやって立っているんですか?」
丈太郎はショーケースの中に入りポケットからマグライトを取り出すと
「これだよ。」
と言ってそれを緑の側頭部に近づける。
マグライトは緑の側頭部にくっついた。
「ショーケースの天井に電磁石があって頭蓋骨の中に仕込んだ磁石を引っ張ってるんだ。」
意外なローテクだった。
「ちょっと手伝ってくれるか?」
と声をかけられて綾もショーケースの中に入る。
緑も含めて3人も入ると結構狭い。
丈太郎は緑の肘を掴んで90度ほど持ち上げる。
「支えていてくれ。」
綾は丈太郎に代わって緑の肘を支える。
少し暖かい。
「体温もあるんですね。」
「ナノマシンの排熱だ。」
丈太郎がマグライトで緑の脇の下を照らしたので綾も肘を支えながら一緒に覗き込む。思ったより顔が近くなったため微かに丈太郎の体臭を感じて綾は緊張したが、そこに処置室で嗅いだ悪臭は混じっていなかった。
緑の脇の下を確認しながら
「ナノマシンが切開跡を増殖させた細胞で塞いでくれる。塞がった傷跡を消すのは一般の治療と同じだ。」
丈太郎の声で匂いから意識を戻した綾も緑の脇の下を確認するが傷跡は全くわからない。
「こんなに綺麗に治るなら、どこから内臓を摘出しても大丈夫なんじゃないですか?」
と疑問をぶつけると、丈太郎は
「皮膚の薄い部位の方が治りが良いし、ナノマシンの関係で縫合ができないから引っ張られて傷口が開くような部位はダメなんだよ。」
と答えた。
2人で反対側の脇の下も確認すると、丈太郎は緑の足元に蹲り脚を拳1つ分ほど開かせた。
「ここにスイッチがあるだろう。これを踏むと天井の電磁石が切れる。」
と言って立ち上がると緑の前に回り彼女を抱きしめて足で床と同色のスイッチを踏んだ。
緑が力を失ったように丈太郎にしなだれかかる。
かがんで緑の背中をショーケースのガラスに預けながら、
「また睨まれると敵わないから言っておくと、残りの切開部も確認するぞ。」
処置室でのことが気付かれていたことを知って綾は少し気まずい気分になった。
丈太郎は緑の脚をM字に開かせると陰毛を掻き分けて彼女の膣に中指を差し入れる。
もぞもぞと中を探った後、2本の指で膣を開きマグライトで照らして中を確認した。
確かに動きが怪しすぎるが、他にやりようがないのも確かなので、綾は無理やり納得する。
「うつ伏せの膝立ちにするから手伝ってくれ。」
と言われて綾は、緑の脇に両手差し入れて後退した丈太郎の反対側に回り、彼女の腰を持ち上げる。
緑の体の手触りは柔らかいのだが内臓を全て失っているせいか身長の割に随分軽いので生前と同じなのかは綾にはわからなかった。
「上半身は床に付いていていいから膝を開いて尻を持ち上げてくれ。」
自分では絶対やりたくないポーズになった。
丈太郎は前からやったのと同じ手順で緑の膣の中を確認すると、肛門に移った。
括約筋の緩んだ緑の肛門は、くすんだ色の範囲が随分広くなっていたが、肛門自体は中で結ばれているせいか、ピンクのおへその様になっていた。
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