第11話 祈祷師が来た②

「ハイッ☆1・2・3・4そこでターンッ遅いぜぇ☆」


 黒マキとファブリーゼはダンスのレッスンをしていた。

 ほとんど全ては突然押しかけて来たダンシング祈祷師のモンドレー・チャンヤマのせいだ。


「スキルを知るにはダンスだぜ☆ダンスで自分を表現したらスキルも自然に見えて来るってワケじゃん。そういう事でミュージックスタートォ☆」



「五月雨海峡」


 作詞 モスラ

 作曲 モスラ


 海の彼方向かって咲く


 一輪のハマナス


 雨が降って、夜風に吹かれ、月に照らされ


 それでも一人咲いています


 遠い北の大地


 誰を待っているの


 どうして華に


 生まれてしまったの


 いつかうみねこに生まれ変わって


 きっとアナタ逢いに往きます


 今は霞んで見えない北の大地


 あぁ、五月雨海峡



「なんですのこの歌!?暗すぎですわ」

「演歌やね」

 天井のミラーボールも悲しげな光を照らしてゆっくりと回っている。


「どんな音楽でも踊れるのが一流のダンサーじゃん。そんな事じゃ一流にはなれないぜ☆」

「ならん」

「そうですわ、私達は黒マキのスキルを知るために」

「知りたいのかい☆知りたいよね☆なら踊れ。死ぬまで踊り続けろォ」


 頼まれてもいないのにチャンヤマは踊り始め、それを見ていた二人もいつしか踊ろうかという気になり始めた。

「なんやち、この沸き上がる力」

「これが踊りの力ですの」

 二人は気付いてしまった。

「そう、それが踊りの力だぜ☆じゃあどうすればいいか、もう理解OK??」

「おぉ、OK」

「ですわ」


 なんやかんやと二人はうまくチャンヤマの手の上で踊らされているようだ。

「マキ黒は動きのキレはいいぜ、だけどリズム感がまるでなってねぇ↓↓」

 運動神経はいい黒マキだが音楽的なセンスは残念な方だ。

「ファブリーゼはもうあれだ、笑うしかねぇぜ☆HAHAHAHA↑↑」

 ファブリーゼは乗馬以外の運動センスがあれだった。

 だからもう笑うしかない。

「HAHAHAHA!!」

「HAHAHAHA!!」



 二人は北海道物産展で取ったカロリーを全て消費して、川から飛び出して打ち上げられた鮭のようにひっくり返っていた。

「う~ん、全くなにも見えねぇぜ☆これはスキルねぇな」

 チャンヤマは無慈悲に断言した。

「えぇ……」

「踊り損ですわ」

「じゃあ俺は帰るぜ☆またねー」

 チャンヤマは人の家で踊るだけ踊って帰っていった。あとはミラーボールがむなしく回っているだけである。



 踊り疲れた二人はリボンシトロン(北海道のサイダー)を飲んでマルセイバターサンドを食べて一服していた。

「お嬢様、お客様がお見えですよ」

 サタケが誰かを連れて来た。

「どうも魔導士のチナダウと申します」

 見ての通りおばさんの魔導士だ。

「魔導士??呼んでませんがなにか用でして??」

 困惑するファブリーゼの言葉にチナダウもまた困惑させられた。

「はぁ、シャルクスさんの紹介で来たのですが」


「!?」

「じゃあ、さっきのおっさんなんや!?」

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