第10話 祈祷師が来た①
「ウニだ!!ジンギスカンだ!!バターサンドだ!!」
リュド王国のサンマツコ広場にはいくつもの露店が立並び、多くの人でにぎわっている。
黒マキとファブリーゼは北海道物産展に来ていた。
北海道物産展に行くのに理由はいらない。
人は誰しも心に北海道があるのだから。
「へい、海鮮丼」
溢れんばかりのいくらとウニ、どんぶりからはみ出したエビとカニ、ダイヤやルビーの様に光り輝くホタテとしゃけ、どこをとっても完璧な布陣。
「やっぱり海鮮丼は北海道に限りますわ」
「きときとやちゃ富山湾も負けとらんけど」
普段から富山湾の新鮮な魚を食べている黒マキも満足する新鮮さだ。
流石は北海道、そしてこの北海道物産展を企画した運営の手腕が推し計れる。
「次は富良野のチーズケーキを食べますわよ」
「なーん、その前に帯広の豚丼、それから長万部のかにめしも食べんにゃ」
「ちょっとお待ちなさい、重たい物ばかりじゃない。他にもザンギとかししゃもとか熊笹ソフトクリームとかあるじゃない」
「米……」
「コメ??」
「美味しい米が食べたい!!」
黒マキがリュド王国に来てから一週間、それなりにこの国の料理を楽しんではいたが、どうにも納得出来ないことがあった。
それは米がぱさぱさして美味しくないという事だ。
「確かにこの国ではパンに比べて米は今一つマイナーな食材ですわ」
「そうなんよ、なんか品種も富山とは違うし」
「よく出回ってるのは大体リュドヒカリかエルフの風、あとは……いちまん穀ね。まあ、品質はどれも大差ないですわね」
「この国の人達は米に興味ないがけ」
「それもあるけど、あなた達富山人みたいにそのまま炊いた米を食べるのはあまり一般的ではないのですわ。普通はクリームを入れたお粥にしたりシーフードと一緒に平鍋で炊いたり五平餅にしたりするものですわ」
「それはそれでうまそうや」
結局、黒マキは一人で豚丼とかにめしを食べてからチーズケーキも食べた。
「楽しまれている様でなにより、催しを企画した甲斐があるボウケン」
ジンギスカン中の二人に声をかけて来たのは貴族風の出で立ちの男だった。
「シャルクスさん」
「知り合いちゃ??」
「どうも初めまして、サンマツコ自治会長兼冒険者ギルドマスターのシャルクス・シャシャナクと申しボウケン」
「どうも黒マキです。パートタイマーです」
彼こそがこの北海道物産展を企画した張本人、シャルクス・シャシャナク、それはシャルクス・シャシャナク、つまりシャルクス・シャシャナクだ。
「なるほど、貴女が異人の方、このシャルクスに手紙を出すとは見る目あるボウケン」
「??」
「このシャルクスさんはとても広い人脈の持ち主、黒マキのスキルを調べる事も可能ですわ」
ファブリーゼは仕事柄、シャルクスがギルドマスターを務める冒険者ギルド「はねつき人魚」と付き合いがあり、彼とも知り合いだったのだ。
そういう訳でファブリーゼはシャルクスに手紙を送っていた。
「スキルを調べるには優秀な魔導士や呪術師、占い師など魔法分野に精通した人物が必要、既に私の人脈から優秀な魔導士を手配しているボウケン」
「流石シャルクスさんですわ」
翌日、それは黒マキとファブリーゼが屋敷でメイドかるたの練習をしている時にやって来た。
「はい、今出ますわ」
ファブリーゼが玄関の扉を開けるとそこには黒い肌にアフロ、星形のサングラス、そして派手なスーツを着たダークエルフの男が立っていた。
「イェェッ、ダンシング祈祷師のモンドレー・チャンヤマだぜ☆シクヨロッ☆」
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