第3話 闇の転生③

 異世界召喚の儀式はおじいの大雑把な采配で行われた。

 おじいが床の魔法陣に手をかざし

「あぁ、えぇとなぁ、そうそう……ライヒトゥムベルク」

 と唱える。


 天井にあったミラーボールはかつてない速さで廻り始め、キラキラとまき散らされる光が煌めく銀河の様であった。

 それに呼応するように床の魔法陣が光り始めると、その中心から亀裂が入り、例えるなら空間がそこから壊れていって、最後にはファブリーゼ自身も吸い込まれるような感覚に捉われた。



 山だった。

 それは山だった。


 背の低い草が生い茂る、開けた湿原のそのまた向こう、連なる山々の稜線が見えた。

 登山家が目を向ければ分かる。あの山々は森林限界を超える標高で2000~3000メートル級の連峰だ。


 空気が美味しい。

 屋敷の地下室にいたはずなのに、いつの間にか山の見える高層湿原に立っていた。

「ここはどこなの」

 うろたえるファブリーゼにおじいはまだ

「ライヒトゥムベルク」

 とか言ってる。


「お嬢様、あそこに誰かいますよ」

 サタケが誰かをみつけた。

「まさか転生者!?」

 山へと続く木道が湿地の中にあって、その上に誰かが立っている。

 女だ。

 それもファブリーゼと同年代くらいだろうか。

 ファブリーゼと同じ短命種に見えるが、黒くて長い髪に暗い瞳をしていて、どんぶりで白飯をかき込んでいる女だ。

 彼女は一度ファブリーゼの方を見てから、再び白飯をかき込み始めた。


「ナイストゥーミーテュー」

 ファブリーゼが近寄って接触を試みたが

「な~ん、食事中ちゃ待っとられ」

「あっはい」


 三人は正座で食べ終わるのを待った。

 すると、鳥の鳴き声の様な奇妙な声がどこからともなく聞こえ、それからさっき部屋に乱入して来た女が

「退出時間ですぅ」

 と天から語りかけてきた。

 周囲が深い霧に覆われたのはそれとほぼ同時だった。


 霧が晴れると三人は元の地下室で正座していた。女はまだ白飯を食べている。

 食べ終わるとどんぶりを床に置き

「ここなんなんけ」

 と今更になって周囲を気にしている。


「ようこそ異人さん、私はファブリーゼ・ゴールドパークですわ」

 ファブリーゼが名乗れば女も名乗る。

「私は岩代牧(いわしろまき)、黒部市出身ちゃ「黒マキ」って呼ばれとる」


 一見して共通点の無い二人ではあるが、二人に共通点を見出すならば、誰かのためより自分のために生きる女だという点だろう。


 文字数が余ったからリュド王国の国家を紹介するよ。


「リュド王国国家」


 作詞 モスラ

 作曲 モスラ


 海も山も


 どっちもあるよ


 我らのふるさと


 リュド王国


 男は流れて


 いつかたどり着く


 女と酒と涙の


 リュド王国


 全ての種族が


 手を取り合う


 犬猫わんわん


 リュド王国


 Be a mermaid


 男の中の男になれ


 想いは次元(かなた)を超えて


 必ず届くから


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