第27話 雛の宿
「何故このような時期に?」
思わず女将に聞いた。
「ただの飾りでございます」
返ってきたのは答えともならぬ答えであった。納得できる筈がなかった。師走の旅館に飾られるには、節句が一つ二つずれている。
あてがわれた部屋の中、圧倒的な存在感を誇って鎮座していたのは、平飾りの
これでも女の端くれ、雛人形が嫌いだというわけではない。細やかな刺繍が施された十二単を身に纏った女雛と、
雛は、成程、飾りでしかない。
その異様さにも、じきに慣れてきた。
ゆったりと流れる時間の中、重くなり行く瞼に従って布団に潜り込んだ。部屋に
そうしていつしか意識は暗闇に落ちていった。
「ただの飾りでございましたので」
という答えともならぬ答えであった。
了
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます