第10話 連れ立ち

その木箱は、書斎にあった



古机の引き出しの奥深くに

隠すように保管されていた。

棺に共に納めてほしいと

父が生前、私に言い残したのだ。



そっと取り出した箱には赤い紐が

執拗に巻きつけられていた。


気になって思わず紐を解くと、

蓋の端から白く華奢な手が

ずるりと這い出てきた。


咄嗟に木箱を放り出したが、

その手は既に消えていた。


父は何を背負って、

逝くつもりだったのだろう。

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